白内障手術は今でこそ「日帰りでできる簡単な手術」というイメージです。しかし頻度はまれですが白内障術後に起こる感染症があります。「眼内炎(がんないえん)」と呼んでいますが、私たち眼科医が一番経験したくない病気です。

 「眼内炎」は白内障手術後に目の中に感染が広がり、適切な治療を受けないと失明するリスクが高い深刻な病気です。感染というと特殊な悪い菌が原因と考える方が多いと思いますが、ほとんどの起炎菌は目の周りの皮膚にいる常在菌によるものです。四大起炎菌はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)、黄色ブドウ球菌、腸球菌、アクネ菌で、どこかで耳にしたことがある名前だと思います。

 さてコロナ禍でマスク着用が日常となっていますが、私が気になるのは同じマスクを着用している方を見かける点です。ある統計によるとマスクを毎日変えているのは全体の6割程度で、2〜3日同じマスクを使っている方が多いようです。

 白内障術後はガーゼの眼帯をしますが、多くの病院では翌日に外し、その後はガーゼはなしで過ごすことになります。透明なカバーをつけることはありますが、ガーゼを張りっぱなしにはしません。ガーゼの下で細菌が増殖し、感染のリスクが高まるためです。

 マスクは外からのウイルスや細菌の付着はもちろん、1日に何度も手で触れており、一方でマスク下では皮膚の常在菌が増殖しています。白内障手術後の目にとっては雑菌の温床です。そんな不潔なマスクが目のすぐきわにあったら…感染リスクが高まることは想像がつくと思います。

 最初に述べたように、手術後の感染は頻度は低いものの、発症すると失明のリスクが高い危険な状態です。マスクを毎日変えることで危険を減らすことができるので、手術を受けたあとは必ず1日で使い捨てましょう。

◆窪谷日奈子 医療法人社団吉徳会・あさぎり病院・眼科医長。眼科専門医。