日本最古の伝統産業と言われる西陣織。その最高峰の繊細な技術によって表現した名画、名作の数々を展示している場所があるのをご存じだろうか。「西陣織あさぎ美術館」(京都市下京区)では、22日から尾形光琳らを代表とする優美で絢爛豪華な企画展「琳派〜美の系譜」を開催中。早速、のぞいてみると想像以上の精緻さに圧倒された。7月3日まで。これは足を運ぶしかない!?

 これが織物でできているなんて、信じられないほどだ。タテの糸とヨコの糸だけでこんなことができるなんて、さすがは職人技。世界に誇るべき日本の伝統工芸「西陣織」だけのことはある。

 なかでも圧巻だったのは「西陣織あさぎ美術館」のエントランスで出迎えてくれた尾形光琳作の「紅白梅図」をモチーフにした黄金タペストリー。本金箔を織り込んでおり、きらびやかなこと、この上ない。大きさは丸帯幅(60センチ)の5本分ということから3メートル×3メートル。境目を正確につないでおり、そちらの技術にもほとほと感心させられた。

 また光琳で言えば国宝「燕子花図屏風」も今回の呼び物のひとつ。その色使いと繊細さには言葉を失うほどだ。さらに、京都の旧家で発見された光琳の”幻のかるた”を再現したものも展示され、目を見張らされた。その文字の流れるような繊細さはうっとりするほど。しかし、今回の取材で一番驚かされたのは西陣織の裏地を見せてもらったときの糸の多さ。職人の苦労はいかほどか。

 このような芸当ができるのは、西陣織の中でも細い糸で精緻に織れる「1800口織ジャガード織機」を使っているからこそ、という。ジャガードは明治期にフランスから輸入したもので生産性を一気に上げ、現在に至る。一方、1800口とは袋帯幅(30センチ)にタテとヨコの糸が交差する点が1800あることを意味し、一般的な西陣織の4倍から9倍の細やかさで微妙な色や線、絵柄を表現できる。「テレビでいう画素数の違い。4Kとか8Kのようなものです」と担当者。完成までには20の工程があり、すべて分業だそうだ。

 もちろん、館内には、装飾美術の最高峰と言われる琳派以外の作品も常設されており、高松塚古墳の壁画をはじめ、国宝級の仏画、仏像、書画なども展示。さらに、モネ、ルノワール、ゴッホといった日本人が大好きな印象派を代表する画家たちの有名な作品が多数描かれ、袋帯などにもなっている。

 おもしろいと思ったのが光をためる蓄光糸で織られた国宝「日月山水図」と俵屋宗達の「松島図」をベースにした屏風の廊下。反対側の壁には印象派の絵も飾られ、ブラックライトが幻想的な世界を演出してくれる。そうそう、作品の写真撮影はすべてOK。出口付近にはインスタ映えスポットもあり、ギャラリーでは関連グッズもリーズナブルな価格で提供されている。ぜひ、訪ねてみてはいかがだろうか。

 美術館は京都市下京区烏丸通仏光寺上ルのツカキスクエア7階。製造卸ツカキ・グループの塚喜商事「あさぎ事業部」が令和元年8月に自社ビル内に開設した。西陣織あさぎは大正年間に創業、2013年に塚喜商事が事業を継承している。これからも分かるように西陣織の需要は低迷しており、美術館を開館した背景には技術の保全や職人の育成、作品の保存などの目的もあったそうだ。

 担当者は「後継者が少なく、どの工程も人手不足で死活問題です。まずは西陣織のことを広く知っていただくことが大切で今後は服飾関係の研修旅行などにも力を入れたい。開館してすぐにコロナ禍となり、インバウンドがなくなったが、世界にも発信していきたい」と話していた。凄すぎる西陣織の技。関係者の願いが叶えばいいなと思った。

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【西陣織あさぎ美術館】
開館時間は10時〜17時(入館は16時30分まで)休館日は月曜日(祝日の場合は翌火曜日)、入館料は一般500円、高校生・大学生400円、中学生以下無料

(まいどなニュース特約・山本 智行)