2014年より「立ち猫」という二本足で立つ猫たちの写真を発表し続けている写真作家・山本正義さん。

現在は奈良の蔦屋書店で「奈良(ニャら)でひとやすみ」というタイトルで写真展を開催している山本さんに、自身のライフワークとなった「立ち猫」についてお話をうかがった。

――「立ち猫」を撮る事になったきっかけは?

山本:元々、仕事をしながら趣味で西成や山野の路上生活者の方の写真を撮影してました。その中に西成とかにいる猫の写真も撮影してたんです。ある時、仕事をしていた関係で障害者施設で写真展をする事になり、作品の中から猫の写真をピックアップして展示してたんですね。いろんな方が見てくれてた中で、ダウン症の女の子がある猫の写真を見て、お母さんのシャツの袖を引っ張るほど興奮して見てくれてたんです。それが躍動感のある猫で、その姿を見て、僕の撮った猫の作品が人の心を動かすことができたんやって思ったのがきっかけです。そこから動いてる猫、そして立っている猫とモチーフが変化していきました。

――猫は好きだったんですか?

山本:いや、犬の方が好きでした(笑)。でも以前から道を歩いててもそこらへんにいる猫がよく寄ってきてくれたりしてたので、猫に好かれるタイプではあったともいます。

――撮影は大変そうですね。

山本:そうですね、やっぱり猫は気まぐれですから。自分は“ネコミニケーション”と呼んでいるんですが、まず猫とコミュニケーションを取ることから始めてます。基本、意識としては猫の方が、自分より上であるという体で接しているので、話しかけながらも嫌がられたらそこで猫と接するのはやめるようにしてます。

僕は基本、瀬戸内海や、大分県などにある島に通って、そこに住んでいる猫たちを撮影しているんですが、島によって猫の性格や気質も違うし、築いてきた関係性が急になくなることもあるし、帰ろうとしたら追いかけてきたりする。その想像のつかない動きはかえって面白いので一生懸命ネコミニケーションを取るようにしてます。

あと、猫の前で猫じゃらしや自分の指を動かしながら撮影するんですが、ファインダーを覗かずに猫の表情や動きを見ながらシャッターを押してます。覗きながら撮ると猫が警戒したり、怖がったりしますんで、あくまでのその瞬間を切り取りたいのであえて覗かないようにしています。だからかなりの枚数を撮るんですが、5000枚撮ったとしたら、そのうち1枚か2枚納得のいく瞬間のものがあるって感じですかね。それに僕がいいと思って選んだ作品が、見ていただく方によってさらに育っていく感じというのもあって大変ではあるけれど面白いなぁと感じることも多々です。

――馴染みにしている猫はいると思いますがその中で印象に残っている猫はいますか?

山本:いっぱいいて難しいですけど、瀬戸内海にある島の猫、シマちゃんって名前で呼んでたんですけど、その子と何度かネコミュニケーション取ってたら、ちょっと付いてきてって感じでスタスタと歩いていったのでその後を追っていくと、今ここで写真を撮ってという感じで、それが猫同士がキスしているような行動をしてくれて…で、その作品を岩合光昭さんの写真コンテストに出したら入選したんです。シマちゃんのおかげです。今はその島でいなくなっちゃったみたいなんですけど、もし再会できたらその時のお礼を言いたいです。

もう一匹は太郎って名付けてたんですけど、自分が仕事先の人間関係で悩んでいて心が折れそうになってた時に、友人が僕が住んでいるエリアにある川沿いに猫が何匹か住んでいるから見てきたらちょっとは気持ちが癒されるかもって言われて行ったんですね。その時に親子の猫がいて、確かに気持ちが癒されまして。何回か通ってるうちに子猫の方が僕のカバンに入ってきたんです。これは連れて帰ってくれと言われてるのかなと、親猫の方に連れてかえってもいいかなって話しかけて、一緒に暮らしました。今は事情があって友人宅で暮らしていますが、太郎に随分と精神的に助けられました。

そんな猫たちと知り合い、関わるようになってから、写真家として何を自分は表現したいかという目標ができて、それに向かって動くようになれて、今、作品展を含めて猫にまつわるいろんな展開ができるようになってきてつくづく“招き猫”になっているだけあるなあと思っています。

ーーこれからの展開は?

山本:もちろん「立ち猫」はこれからも取り続けていきますが、この前やっとテレビのロケで行けましたが、コロナ禍で個人的にはなかなか島には行けなかった状態だったので、またちょっとずつ行けて、そしてもう一度初心に戻って猫に向き合って、人の心に“気づき”を与えられるような写真を撮ることができたらなぁって思いますね。

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山本さんはTwitter、InstagramなどのSNSやブログでも日々、猫たちの写真を発表している。猫好きの方にはぜひご覧になっていただきたいオリジナリティーと可愛さあふれる作品がいっぱいだ。

山本 正義 (ヤマモトマサヨシ)

写真家。主に香川県の離島や瀬戸内海で撮影している。インスタグラムに投稿している島猫の写真が人気。猫が二本足で立つ姿=「立ち猫(正式には商標登録マーク「R」が付く)」が、ユニークでかわいいと好評。近年はAdobe主催の猫の日コンテスト写真部門の審査員も務める。

「山本正義写真展 奈良(ニャら)でひとやすみ」

奈良蔦屋書店にて6月7日(火)まで開催。

(まいどなニュース特約・仲谷 暢之)