自身が勤める会社で見逃せない不正がおこなわれている場合、あなたならどのように行動しますか。黙認することに耐えられず、然るべき処罰を下してほしいと思う一方で、自身の立場やそれによる不利益など葛藤を抱えることもあるのではないでしょうか。

ツイッターで、仙台弁護士会所属の弁護士・太田 伸二さん(@shin2_ota)の投稿に2.7万いいねがつき、話題を呼んでいます。太田さんは弁護士として労働問題と貧困問題を中心に取り組んでいる方で、話題となった投稿は以下のような内容でした。

「職場の不正がどうにも我慢ならなくて『内部告発をしたい』と思っている人はSNSで拡散する前に、できれば弁護士に相談してください。告発者に『ノーダメージ』で目的を達したことは何度もあります」

勇気を持って発した言葉だったはずが、方法や発信する場所によっては思わぬ形で自分に返ってきてしまう可能性も。まずは法律のプロである弁護士への相談を、と提案する投稿です。詳しいお話を太田さんに伺いました。

「内部告発はリスクも伴うものでもある」

ーー初歩的な質問ですが、会社の内部告発というと具体的にどういった事例があるのでしょうか。

「内部告発は、会社による不祥事について行政機関に申告したり、マスメディアを通じて公表したりする行為です。会社による不祥事には違法なものも、違法かどうか微妙だけれど企業の姿勢が問われるものなど様々なものがあります。そのため、『内部告発にはこのような類型が多い』という言い方はしにくいです。

これまでには例えば、運輸会社の従業員が同業者間の闇カルテルを内部告発した事件(トナミ運輸事件)や、営業マンとして働いていた社員が上司による他社からの引き抜きを内部告発した事件(オリンパス事件)などが有名です。私自身が関わったものとしては、食品衛生に関わる問題や、補助金の不正受給の問題などがあります」

ーーツイートするに至った経緯を教えてください。

「今回のツイートをしたきっかけは、大阪王将仙台中田店の元従業員の方が、同店の衛生環境(ナメクジの大量発生等)をツイートしていたのを目にしたことがきっかけです。このツイートの内容から同店には問題があるのではと思った一方で、会社側が元従業員の方に対抗措置を取るような事態に発展しないかと懸念していました」

ーー太田さんの投稿で言うところの「ダメージ」ですね。

「内部告発をしたことのリスクとしては、会社から名誉毀損として損害賠償請求をされることが考えられます。その他、在職中であれば解雇されたり、解雇されなくても仕事を取り上げられ、いわゆる『追い出し部屋』に配置転換されたりということもこれまでにはありました。内部告発は社会正義のための行為ですが、リスクも伴うものでもあります」

ーーでは、もし内部告発を考えている場合、どのように行動すれば?

「できれば弁護士や労働組合に相談をしてほしいと思っています。先ほど述べたように、内部告発を行った場合、会社からの『反撃』が予想されます。それに対応できるくらいに十分な証拠があるかどうかを検討することが、弁護士であればできます(もし証拠が足りなければ『こういう証拠を用意できませんか』とアドバイスをすることもできます)。

また労働環境の問題であれば、労働組合に加入し、団体交渉をしていくことで改善を求めていくこともできます。もし会社がそれに応じなければ組合の活動として外部に明らかにしていくこともできます。こういった弁護士、労働組合のような専門家・支援者と力を合わせることで、よりダメージを受けにくい形での内部告発ができると考えます」

ーー依頼する場合の費用はどれくらいかかりますか。

「これは難しい質問です。内部告発だけを目的として依頼をするとすれば、費用の計算が難しいからです。というのは、弁護士の費用は請求する金額を目安として着手金を設定し、最終的に得た経済的利益に割合を掛けることで報酬金を算定します。

ところが内部告発の場合、ご本人に経済的利益が発生しないため、どう算定するかは弁護士によって異なると思います。なお、私が過去に担当した事案では、会社に対する他の請求と合わせて受任したため、内部告発部分については費用を頂きませんでした。これは弁護士によって考えが違うところですので、弁護士に相談をする際に確認をしていただいた方が良いと思います」

ーー現在、内部告発や労働環境などで悩みを抱える方にアドバイスなどがあれば教えてください。

「会社で働いていて抱えてしまった問題は、我慢したり諦めたりするのではなく、ぜひ弁護士に相談してください。できれば『会社を辞める前』が良いです。辞める前ならば職場環境を改善して働き続けられることもありますし、どうしても辞めるとしても、辞める前に証拠を集めることができます(この点については過去に以下のツイートをしています)。

相談するのであれば、労働事件に取り組んでいる弁護士に相談をしてください。相談する弁護士に心当たりが無ければ、ぜひ『日本労働弁護団』の相談窓口を活用してください」

(まいどなニュース・門倉 早希)