扇子を振りながらくるくると回ったり、巨大なオオサンショウウオのぬいぐるみを上下させたり…。京都市の観光名所・嵯峨嵐山と京都府亀岡市を結ぶ「嵯峨野トロッコ列車」で、乗客を見送る駅員らの一風変わったパフォーマンスがSNSで話題となっている。一体何があったのか。気になって、運行会社の嵯峨野観光鉄道(京都市右京区)に聞いてみた。

 トロッコ列車は、保津川下りで知られる保津峡の渓谷沿いを中心に約7・3キロの区間を運行する。注目を集めているのは、嵯峨野トロッコ列車が9月15日にツイートした動画だ。

 トロッコ嵯峨駅のホームで、日の丸扇子を手にした女性社員がヒラヒラさせながらポーズを決め、「いってらーっしゃいー」「はいっ3号車! はいっ4号車! ありがとぉ〜」などと動きだした列車に向かって感謝を告げている。両脇を固める女性2人も全長約160センチのオオサンショウウオのぬいぐるみを揺らしながら乗客を見送っている。

 このツイートには3800以上の「いいね!」が付いたほか、「素晴らしいお見送りですね」「扇子のお姉さんノリノリ!」「楽しそうで、見てるほうも嬉しくなりました」などとコメントも多数寄せられた。その後も歌や踊りを交えた見送りの動画が定期的にアップされ、反響を呼んでいる。ちなみに、オオサンショウウオのぬいぐるみが登場するのは、京都水族館(下京区)とのコラボ企画の一環だ。

 同駅では、以前から時間のある社員らがホームに出て、手を振って見送っていた。パフォーマンスが“進化”したのは、8月下旬ごろから。率先して行っているのは扇子を手にした女性で、切符販売窓口を担当している。総務部の秋田保代さんは「普段から場を盛り上げたり和ませたりしてくれるタイプ」と話す。

 見送りの原点には、同社が日頃から心がけている「おもてなしの気持ち」がある。トロッコ列車は1991年、荒廃したJR山陰線の旧線を復活させ、社員9人でスタートを切った。車窓から楽しめるよう桜やモミジを沿線に植栽したり、車掌による歌をはじめ車内アナウンスを工夫したりと、さまざまなアイデアと地道な努力で乗客数は右肩上がりで増加していた。

 だが新型コロナウイルス禍が直撃し、乗客数も激減。未曽有の苦境の中、秋田さんは「お客様に来てもらってこその観光列車であることをあらためて感じた。少しでも楽しんでいただけたら」。そうした気持ちが今回の見送りにも表れているという。

 動画の反響は想像以上といい、秋田さんによると、扇子の女性も「注目を集めて恥ずかしさもあるけど、お客様に喜んでもらって、逆に元気をもらい、モチベーションにもなっている」と刺激を受けている様子。

 オオサンショウウオのぬいぐるみがお目見えするのは、コラボ企画が続く今月末まで。「扇子の舞」に関しては、「秋の観光シーズンに入ると混雑するので、安全面を考えると10月中旬ごろまででしょうか」と秋田さん。おもてなしが詰まった全力パフォーマンスを実際に見たい人は、急いだ方が良さそうだ。

(まいどなニュース/京都新聞・堤 冬樹)