「ナルトビエイ」と呼ばれるエイの目撃が、神戸市兵庫区の兵庫運河で相次いでいる。かつては汚染されていた水質が、何十年もかけて改善。アサリやカキが育つようになったと喜んでいたところ、貝類を食い荒らすエイが、えさを求めて舞い込んできた。エイは長い尾の付け根には毒針を持つといい、地元の漁協は警戒を強めている。

 1メートル以上のヒレをぐわんと動かすと、のびやかに直線を進んでいく―。9月下旬の日中、兵庫運河の遊歩道で2時間ほど水面を眺めていると、14匹のエイが確認できた。早朝と夕方の活動時間帯であれば、さらに多くのエイが泳いでいるという。

 「生き物がやって来るのは水質がよくなった証拠だから、うれしいのが一番。でも、せっかく育った貝たちを食べられるのは…」。複雑な思いを話すのは、兵庫漁業協同組合の糸谷末二郎組合長(73)。組合長は1枚の写真を見せてくれた。エイが、水中で自生するカキをくわえる姿だ。丈夫な歯で殻を噛み砕いて食べていた。

 1899(明治32)年に完成した兵庫運河。高度経済成長期には100近い工場が立ち並び、水の汚れがピークに。水面には真っ黒な油が浮き、底はヘドロだらけ。夏にはメタンガスが発生した。1971年に「兵庫運河を美しくする会」を設立してからは、春と秋の年2回、川沿いや水底に眠るごみを引き上げるなど清掃。水質改善の効果があるアサリを育てるなどして、少しずつきれいになっていった。

 エイが運河に侵入してきたのは数年前から。今のところ、食害は少なく、網を張って対策を取っているが、組合長は「100匹以上はいるんちゃうかな。同じ海の生き物なので大事にしたいけど、被害が深刻になれば駆除も考えないといけない」と話す。

 20年以上、エイを研究する長崎大学の山口敦子教授は、エイが侵入してきた理由を、沿岸部のえさがなくなってきたからではないかと推測する。先月、兵庫運河を視察した際には、岸壁に付着した貝がたくさんあったといい、「温度や塩分量などの環境がナルトビエイが生息できる条件に合ったんでしょう」と話す。ただ、ナルトビエイ自体の個体数も近年は駆除されて減っており、「ネットを敷くなどしてうまく共存していければ」と強調する。越冬する際は水深が深い場所に移動するといい、運河にいるとみられるのは長くとも今月下旬ごろまで。

全国では毒針が危ない「アカエイ」の目撃情報

 エイの目撃情報は、意外にも全国でも多い。最近では、東京都の多摩川や横浜の滝の川といった都市部の河川でも報告されている。特に多いのが、尾っぽに長く太い毒針を持つ「アカエイ」だ。刺されると、ビリビリとした痺れとともに激痛が伴う。そして一度刺さると針が抜けにくいという。

 釣りをしていた際に手や足の甲を刺されるケースもあるといい山口教授は「アカエイは返しがあるので、注意しないと刺されてしまう。刺された場合はお湯で温めて病院に行くなどしてほしい」と話す。

(まいどなニュース/神戸新聞・山脇 未菜美)