「この猫は授乳中だね」

りくくん、かいくん(1歳・オス)は、野良猫が出産して育てていた子猫だった。東京都に住むKさんの知人宅に1匹の野良猫が迷い込んできた。メス猫で、サクラ耳ではなかったので、知人は保護団体に相談し、不妊手術を受けさせたという。

その時、獣医師から、「この猫は授乳中だね」と言われたので、慌てて子猫を1週間ほど探したが、なかなか見つけることができなかった。そこで、母猫の鳴き声を聞かせて警戒心を解く作戦で、ようやく人が入れないような狭い路地裏から子猫が1匹、2匹と姿を現し、4匹の子猫が見つかったという。

その中の2匹がりくくん、かいくんだった。後に2匹の里親になったKさんは、「子猫たちのそばにはお皿が置いてあったそうで、どなたか心優しい方がごはんをあげてくれていたおかげで、母猫がいなくても1週間生き延びられたのかもしれません。感謝しています」と言う。

兄猫の後ろに隠れていた弟猫

Kさんは実家で猫を2匹飼っていた。その子たちも元野良猫だった。
「本当に可愛くて、数年前に亡くなったのですが、悲しみが癒えるにつれ『いつかまた猫を飼いたいな』と思うようになっていました。でも、まだ子供が小さかったこともあり、時々ペットショップをのぞく程度で、実際に飼うことはありませんでした」

血統書付きの猫も可愛くて、家族で、「飼うならこの種類かな」とか「まずは1匹、余裕ができたら2匹目を迎えるかな」とか話していた。そんなある日、ある人から保護猫譲渡会を開くという話を聞き、Kさんは会場に足を運んでみようと思っていた。その矢先、りくくんたちを保護したので譲渡したいという話が舞い込んだ。

2021年9月、Kさんは何度か母猫と4匹の子猫を見に行った。最初は保護主である知人が親猫と子猫1匹、Kさんが子猫を1匹、他の人が子猫を2匹引き取るという話が進んでいた。

りくくんは母猫にいつも怒られていて相性が悪そうだったので、Kさんはりくくんを引き取ることにした。母猫と子猫たちに会いに行くと、必ずりくくんの後ろに隠れている、おそらく弟猫と思われるかいくんがいた。

「1匹だけと思っていたのですが、かいがりくの後ろから離れない様子を見て、私の心は大きく揺らぎました。その後、家族会議をして、2匹とも迎えることにしたのです」

保護主は、いつでも4兄弟が会えるようにと、Kさんが子猫2匹、保護主が母猫と子猫2匹迎えることにしてくれた。

不安でいっぱいの兄弟猫

10月、Kさんはりくくん、かいくんを迎えた。2匹とも怯えて震えていた。ごはんも食べず、トイレもせず。Kさんはケージにカーテンをして、あまりのぞかないようにした。

「不安でいっぱいだったようで、2匹でケージのできるだけ奥の方に座り、ずっと寄り添っていました。やはりかいは、りくの後ろに隠れていました」

夜中にこっそりカーテンをめくってみると、緊張で疲れ切ったのか、ハンモックで2匹仲良く一緒に眠っていた。Kさんはその可愛い姿を見て、一緒に引き取って良かったと安堵した。

ただ、キジトラ猫だからなのか2匹とも警戒心が強く、なかなか心を開いてくれなかった。ケージの中をのぞくと奥の方に逃げて、ご機嫌を取ろうとちゅーるをあげようとしても「シャー」っと威嚇された。動物病院に連れて行こうと思っても、素早く逃げ回るので一苦労したという。

「なんとか2匹をキャリーに入れたと思ったら、1匹が脱走するなど、何度か動物病院の予約をキャンセルしたこともあります。インスタで同じような人たちの投稿を見て、自分だけじゃないんだと励まされ、コツを教えてもらいました」

1ヶ月後くらいには信頼してくれたようで、甘えに来るようになった。その頃には、Kさんもそれぞれの性格に合った方法でキャリーに入れられるようになったそうだ。

我が家の救世主

りくくんは好奇心旺盛で新しいものが好き。かいくんに遠慮して、おもちゃなどを譲ってあげる。かいくんはいつでも、いつまでも撫でてほしい甘えん坊。犬っぽい性格で、ボール取ってこい遊びが上手なんだという。

Kさん宅は毎日がにぎやかになり笑いも増えた。りくくん、かいくんの話は一番家族が盛り上がる。一人娘の長女は、初めての弟たちに最初は戸惑っていたが、今はよく面倒を見てくれる。

「人間が不調の時は、2匹が寄り添って心配してくれます。私も家に一人っきりでいることがなくなり、なんとなく安心できるんです。2匹はかけがえのない家族であり、我が家の救世主です」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)