「ラストチャンスだと思って構造改革をやり切りたい」。ジャパンディスプレイ(JDI)の東入来信博会長は9日の記者会見で、2012年の発足以来、初めてとなる抜本的な構造改革への決意を口にした。3期連続の最終(当期)赤字に加えて、頼みの液晶事業の不振を受け、現実を直視せざるを得なくなった形だ。

 今後、着手するのは、国内外の工場の統廃合や従業員の約3700人削減による組織のスリム化だ。これまでは、設立母体となった3社の中小型液晶事業の「寄り合い所帯」が続き、過剰投資の状態だった。東入来会長は「(工場の統廃合などは)設立当時にやるべきものだった」と反省を口にした。

 今回の改革により、年間固定費は約500億円削減できる見通し。しかし、市場には「国内工場の整理は今回だけでは十分とは言えない」(大手証券関係者)と、さらに踏み込んだ対応を求める声もある。

 一方、今回の構造改革では、主力だった液晶パネル事業に代わり、有機ELパネル事業を経営の軸に位置づけた点が大きな変化だ。東入来会長は「有機ELなくしてスマホビジネスの将来なし。戦略的にかじを切った」と方針転換を強調した。

 JDIは、スマートフォン用の高精細液晶パネルが収益の柱で、昨年末には石川県白山市に液晶工場を稼働させた。ところが、JDIが売上高の5割以上を依存する米アップルは、今年出荷する主力のスマホ「iPhone(アイフォーン)」から、液晶に代えて有機ELを一部機種に導入する方針で、来年には導入規模を拡大するとされる。現時点で有機ELパネルを安定供給できるのは韓国サムスン電子1社のみで、JDIは顧客ニーズに応えられない状況だった。

 調査会社IHSグローバルの早瀬宏シニアディレクターは「アップルもリスク回避のため、1社のみから供給を受ける態勢は望んでいない。JDIはアップルの要求に応えられる有機ELを早期に開発すべきだ」と指摘する。

 JDIは19年からスマホ向けに有機ELの量産ができるとするが、自社の液晶技術への過信による開発遅れの影響は大きい。今後、JDIは付加価値の高い車載用液晶パネルや新規事業に注力する方針だが、市場ニーズを再び読み誤らないよう対応する必要がある。【安藤大介】

 ◇キーワード「ジャパンディスプレイ(JDI)」

 日立製作所、東芝、ソニーの中小型液晶パネル事業を統合して2012年4月に設立した。スマートフォンやタブレット端末向けの中小型液晶パネルが主力で、14年3月に東京証券取引所第1部に上場した。筆頭株主は官民ファンドの産業革新機構。韓国メーカーなどとの競争激化で、17年3月期まで3年連続の最終(当期)赤字で、昨年からは主要取引先である米アップルの「iPhone(アイフォーン)」の販売減速のあおりを受けて資金繰りが悪化。当初は今年9月末までに大型有機ELパネル開発・製造のJOLED(ジェイオーレッド)を子会社化して有機ELの開発を加速させる成長戦略を描いたが、数回にわたり延期した。