創業から45年にわたって日本電産を率いてきた永守重信会長兼社長(73)が社長職を退き、後任に吉本浩之副社長(50)が昇格するトップ人事が発表された。永守氏は代表権のある会長兼最高経営責任者(CEO)として引き続きグループ全体の経営戦略を担うが、世代交代は確実に進む。カリスマ的な永守氏に頼ってきた日本電産にとって、円滑に権限委譲が進んでいくかが成長を持続させるカギとなりそうだ。

 京都市内で15日記者会見した永守氏は「世界中を飛び回る体力が限界に来ている。若い人に任せたい」と社長交代の理由を語った。永守氏は、これまでに国内外50社以上の企業を買収し、すべて黒字化に成功。買収先の工場などを頻繁に訪れ、問題点の改善や経営指導を行ってきた。大胆な発言でもメディアの注目を集め、「何事においても世界トップを目指す」など独自の経営理念で社員を統率してきた。

 これまでは、永守氏のカリスマ性と存在感の強さが日本電産の成長の原動力となってきた。だが、永守氏が年を重ねるに従って、近年はリスクととらえる見方が強まっていた。実際、日本電産の有価証券報告書のリスク項目には「永守氏への依存」が挙げられており、永守氏が経営から突然離れた場合、事業や財政状態に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。どう後継に引き継ぐかは大きな経営課題になっていた。

 初の社長交代は、「永守リスク」軽減の第一歩であることは間違いない。永守氏は「(新社長と)うまく分担して成長を加速させる」と述べ、当面は永守氏の仕事の3割を新社長に任せ、数年で5割以上に増やしたい考えだ。永守氏は以前から「30年度に売り上げ10兆円を達成したら経営から完全に身を引く」と公言しており、当面は日本電産の経営陣にとどまる意向だ。

 円滑な権限委譲で永守依存から脱し、競争が激しくなる自動車関連事業などを柱として新たな成長に導けるか。「第二の創業」とも言うべきハードルが吉本氏に課せられたと言える。【土屋渓】