価格高騰が続くコメ。小泉進次郎農相の旗振りで随意契約による政府備蓄米の販売が県内でも始まった。昨秋からの「令和の米騒動」を、当のコメ農家はどう受け止めているのか。福島市内で最大級、47ヘクタールの稲作を営む農業生産法人「カトウファーム」(同市大笹生)の田んぼを訪ねた。
6日午前、加藤絵美さん(43)の車に乗って吾妻連峰を望むあぜ道を進むと、広大な水田を田植え機で進む夫で法人代表の晃司さん(45)の姿が見えてきた。田植えは、この春に仙台から帰ってきた長男・陽向(ひなた)さん(22)と2人でようやく3分の2を終えた。炎天下の作業は重労働で、絵美さんは「息子が帰ってきて本当に助かりました。でないと私が乗っていたところです」と苦笑いする。
晃司さんは大学を卒業後にスポーツジムのインストラクターなどを経て2009年に祖父の農地を継いだ。コメの価格は長年低迷が続いていたため、収入の柱を増やそうと自家製のコメも使ったクラフトビールを醸造する「イエロービアワークス」も20年から経営している。
5月28日からはさいたま市のイベントに出店。1日に終えると、その足で翌2日早朝に車で福島に戻り、晃司さんは1時間ほど休むと「遅れを取り戻さないと」と田植えへ。「ビールも競争が激しくて大変です。体が丈夫でないとできません」と絵美さん。
大笹生や笹谷地区は水田や果樹園が広がる田園地帯だが、農家の高齢化が顕著で担い手は年々減っているという。加藤さんらはそんな耕作者がいなくなった水田も借りて作付面積を増やしてきた。しかし、晃司さんは「田植えは2人、種まきや草刈り、田んぼの水質管理などの農作業は妻や親戚の数人なので、これが限界です」と明かす。
「これまで何十年も(農家の所得向上を実現せず)『生かさず殺さず』の農政を続けたことで、米農家は持続可能性を失った」と晃司さんは指摘する。担い手不足は明らかだが、新規就農するにしてもコンバインなどを買いそろえれば1500万〜2000万円の初期投資が必要となる。「肥料や燃料も高騰して収入が安定しない上に参入のハードルは高い。次世代に『農家をやれ』とはとてもじゃないけど言えません」
コメの価格が高騰していることを、晃司さんは「価格は需給のバランスで決まるので、現状が適正という以外にないのでは」と受け止めている。その一方で「それはあくまで我々の世代がかろうじて黒字になるというだけ」。次世代以降の農業を持続可能とするためには機械を更新するなど再投資が必要だが「そこまでできる利益を持続的に上げられるようにならないと担い手は増えない。今はできない」と指摘する。
加えて地球温暖化の影響で、コメの品質は悪化して作業環境も劣悪になる。取材の帰り際、絵美さんは「加藤家がこの土地を受け継いだから続けてますが、土地に『思い』がない人は続けられないと思います」とつぶやいた。この日の福島市は最高気温30度の真夏日となった。【錦織祐一】


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