成功体験を積み重ね、いずれは自立を−−。愛知県一宮市浅野のイタリア料理店「ナチュラルビュッフェ・ユコーネ」は2年前から、引きこもりやニートの若者を積極的に職場体験で受け入れて雇い、自立を後押ししている。

 ピザ窯を備え、110席ある人気店。店名は日本語の「行こうね」という意味などを込めて付けた。接客や調理、皿洗いなどのスタッフ13人のうち9人は、NPO「いちのみや若者サポートステーション(サポステ)」が支援する男女だ。店から巣立ち、別の場で働く若者も2人いる。サポステの落合佑哉センター長は「社会復帰のために画期的な成果を上げている」とたたえる。

 若者はまず3週間、無給で職場を体験する。その際、店長の越野伸治さん(37)はじっくりと話し合う。自分の失敗談を明かし、相手の過去を聞き出す。得意なことを見つけ、適切な仕事を与える。

 越野さんは「ちょっとのことでも傷つきやすい」と注意を払うが、甘やかしはしない。話すのが苦手なら、接客でも最初は料理をテーブルへ運ばせる。「どうぞ」の一言が硬ければ、「にこやかに」と助言。次に案内係や注文取りをさせ、責任を徐々に持たせる。

 職場体験者の大半が有給のアルバイトに「昇格」した。得意なことを生かそうと、接客などとは別に、店の飾り付けや、インターネット上の店紹介なども任せる。逆に、週1度しか外出できない人には勤務で配慮する。

 活動の原点は約10年前、長年引きこもっていた親戚の男性を引き受けた体験だ。1カ月、毎日自宅まで迎えに行き、1時間一緒に掃除をし、対話した。最初は嫌々だった男性はひきこもり状態から脱した。

 「ここに来る人たちはいい失敗体験もいい成功体験もない」と越野さんはみる。飲食店での仕事は小さな成功体験をしやすいという。「少しでもできれば、ほめる」方針だ。

 昨年まで7年間引きこもっていた男性スタッフ(31)は「店長の熱意でここまでやってこられた」と語る。大学時代、働く意味について考え込み就職活動ができなくなり、閉じこもった。「働き始めたころはヘロヘロになったが、元に戻る不安もあって続けた」。一日が終わるたびに店長に拍手された。今は接客係を務め、新メニュー作りにも挑戦している。店長の勧めで、店の社員となるか転職も考えている。

 越野さんは「スタッフには、いずれ自立し、自分の夢に向かって歩き出してほしい」と全員を温かく見守る。【長倉正知】