ウイルスに汚染された血液製剤が原因でC型肝炎になった患者らを対象にした薬害肝炎救済法について、自民党の厚生労働部会は15日、来年1月に迫る給付金の請求期限を5年間延長する法改正を了承した。公明党も了承済みで、両党は野党にも賛同を呼び掛ける。開会中の特別国会で成立する見通しだ。

 2008年1月に議員立法で成立・施行された救済法は、止血に使われていた「フィブリノゲン」などの血液製剤投与で感染した被害者に対し、国と製薬会社が症状に応じて1200万〜4000万円の給付金を支払う内容。カルテや医師の証言などで投与経験を証明できれば、裁判所への提訴・和解を経て救済される。

 だが、当時の診療記録が破棄されていたり、患者が血液製剤投与を知らされていなかったりするケースも多く、推計感染者数1万人のうち給付金が支払われたのは今年10月末時点で2294人にとどまる。同法の請求期限は来年1月15日で、薬害肝炎訴訟の原告・弁護団などが延長を求めている。【熊谷豪】

 ◇正されぬ薬害肝炎救済法の「穴」

 薬害肝炎救済法には、成立時には想定していなかった「穴」がある。被害者らは給付金の請求期限延長と併せ、この部分の改正を求めていたが、国会の動きは鈍く、先送りされそうだ。

 関東在住の男性(70)の母親は1986年、子宮の手術後の出血を止めるため血液製剤を投与された後、急に肝機能不全に陥る劇症肝炎を発症した。医師は「難しい手術ではない」と言っていたが、駆け付けた男性が見たのは、肝炎に伴う黄だんが生じ、意識不明となった痛々しい母の姿だった。会話を交わすこともできず、翌月亡くなった。

 救済法は、被害者が死亡した時の給付額を4000万円と定める。だがこのケースでは、国は未発症の感染者(給付額1200万円)と同じ扱いだと主張する可能性が高い。法律に、死亡は「慢性C型肝炎が進行」した場合との条件が付いているからだ。薬害肝炎全国弁護団によると、肝炎ウイルス感染者の中にはまれに慢性肝炎を経ずに劇症肝炎になる患者がいるが、法律を作る際は想定していなかったという。

 2012年に施行された集団予防接種時の注射器使い回しでB型肝炎に感染した被害者を救済する別の法律では、劇症肝炎の場合も死亡給付金が支払われる。弁護団の桜田晋太郎弁護士は「B型に比べて劇症肝炎になるケースは少ないが、救済対象から漏れてしまうのは不合理だ」と法改正を訴えるが、与党幹部は「会期が短く、議論の時間が足りない」と消極的だ。

 大学進学のため実家を出てからも手紙やはがきを月に何度もよこしてくれる優しい母だったという。毎年5月の端午の節句には、手作りのちまきを送ってくれた。男性は「すごく大事にしてくれました」と涙を浮かべて振り返る。

 男性は訴える。「お金の話ではないし、謝罪もいらない。ただ、ウイルス感染が原因で死亡したのは事実。その責任が国にあると認められなければ、亡くなった本人が一番悔しいと思う」【野田武】