和歌山県田辺市で2018年5月、資産家の野崎幸助さん(当時77歳)を殺害したとして元妻の須藤早貴容疑者(25)が逮捕され、5日で1週間となる。事件は野崎さんの自宅という「密室」で起きた。直接的な証拠が乏しい中、捜査当局は状況証拠による「消去法」で裏付けを進めている。発生から3年を目前に、捜査はなぜ急展開したのか。

 須藤容疑者は18年5月24日、何らかの方法で多量の覚醒剤を野崎さんに飲ませ、急性覚醒剤中毒で死亡させた疑いが持たれている。県警は認否を明らかにしていないが、逮捕前の任意聴取には関与を否定した。

 県警が立証の柱に据えるのが、覚醒剤との接点だ。須藤容疑者は事件前、インターネットで覚醒剤について検索していた他、密売人とみられる人物と同じ時間、同じ場所にいたことがスマートフォンの解析などで判明した。

 また、野崎さんが覚醒剤を飲まされたとみられる時間帯は家政婦の女性が外出。夕食時で、須藤容疑者と2人きりだったとされる。

 野崎さんは事件後に愛犬の葬儀を営む予定で自殺の動機がなく、覚醒剤を常用していた痕跡もなかった。県警は「須藤容疑者以外に覚醒剤を混入する機会がある人物はいなかった」と立証する方針だ。

 ただ、目撃者がおらず、覚醒剤の摂取方法などの核心も判然としない中、捜査は足踏みを続けた。ある県警幹部は20年、「捜査は尽くしたが、検察などのゴーサインが出ない」と漏らしていた。

 21年1月、須藤容疑者が海外移住を計画していると週刊誌が報道。県警幹部は今回、逮捕に踏み切った理由を「より確かな裏付けが取れた」と話すが、別の捜査関係者は「(海外移住について)逃げられたら大変なこと。関心を持っていたのは事実だ」と明かした。【山口智、橋本陵汰】