日本にいながら世界各国の料理を食べることができファストフードが発展した今でも、和食をゆっくり味わう時間はなんだか気持ちがホッと落ち着く。和食は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録され海外からも関心を集めている。京都の食文化に触れることができる「京の食文化ミュージアム・あじわい館」(京都市下京区)に足を運び、食について学んだ。【井手千夏】

 京の食文化には、京料理や家庭のおかず「おばんざい」、決まった日に決まったものを食べる「おきまり料理」などがある。料理の特徴として、だしをベースとした味付け、旬の野菜や乾物、大豆加工品を組み合わせた一汁三菜を基本とすること、五感で楽しめることなどがあげられる。四季折々の季節感や食材を無駄なく使い切る「始末」といった姿勢も大切にされている。

 ミュージアムは日本初の中央卸売市場として1927年に開設した京都市中央市場の関連施設にある。京の食文化に親しんでもらおうと、2013年に開館した。京都府と京都市が運営する。

 静かな館内で思わずおなかが鳴ったのは、色鮮やかな料理サンプルが置かれたコーナーだ。無病息災や家内安全の願いを込め、年中行事や暦に合わせて食べる「行事食」が12カ月に分けて並べられている。

 京都で6月に食べられる「水無月(みなづき)」は、ういろうに小豆が乗った三角形の和菓子。小豆は悪魔払い、氷を表した三角形は暑気を払うと言われている。7月の祇園祭の時期にはハモを食べる習慣があり、祇園祭は別名「鱧(はも)祭り」とも称される。夏にはハモを使った寿司(すし)や天ぷら、おとし(湯引き)が市内のスーパーに並ぶ。祭りでにぎわう秋の京都にかかせないのが鯖(さば)寿司。祭りの日には親戚らに手作りの鯖寿司を配る風習があり、鯖を酢でしめる加減は各家庭で異なるため「おふくろの味」のひとつなのだという。

 展示スペースを進むときらびやかな料理模型が目に入る。「京料理」の源流となった五大料理のコーナーだ。

 五大料理とは、宮中ゆかりの「有職料理」、武家でもてなされた「本膳料理」、寺院が継承する「精進料理」、お茶の席で親しまれた「懐石」、海から遠い盆地の京都で発達した「川魚料理」。

 小ダイの浜焼きやサワラのみそ漬け、すっぽんの吸い物といった料理が焼き物の皿や塗り物のおわんにきれいに盛り付けられている。模型とはいえ、上品で美しいものを前に心躍る。

 展示スペースでは茶や和菓子、清酒についても紹介され、調理実習室も併設されている。プロの料理人による教室が月に5回ほど開かれ、京料理や魚のさばき方について学ぶことができる。広報担当の田坂幾志(ちかし)さん(38)は「家族で楽しめる施設になっています。食に興味を持つきっかけになればうれしい」と話す。

 ◇京の食文化ミュージアム・あじわい館

 京都市下京区中堂寺南町130 京都青果センター3階。入館無料。開館は午前8時半〜午後5時。水曜(祝日を除く)、年末年始休館。事前予約すれば語り部から食や日本酒、野菜、魚などについて話を聞くことができる。問い合わせは同ミュージアム(075・321・8680)。