安倍晋三首相は15日、ベトナムとフィリピン訪問を終え、政府専用機で帰国した。中国の習近平国家主席、李克強首相と相次いで会談し、日中関係改善への動きを加速させた。アジア太平洋経済協力会議(APEC)と東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の多国間首脳会議の合間に、習、李両氏を含め16人の外国首脳・要人と個別に会談。北朝鮮への圧力強化を求めた。

 首相が腐心したのが、日本の外交政策が中国に「包囲網」と受け取られないようにすることだ。トランプ米大統領と合意した「自由で開かれたインド太平洋戦略」の推進に関し、14日夜のフィリピンでの記者会見では「この地域の平和と安定に向け、日本と中国が協力を深化させていく必要がある」と述べ、中国も排除しない考えを示した。また、首相は中国主導の経済圏構想「一帯一路」に協力する用意があるとの姿勢も改めて示した。

 首相が目指すのは、日中平和友好条約締結40周年となる来年中の首相と習氏の相互訪問実現だ。習氏は11日の日中首脳会談の最後に「日中関係の新たなスタート」と言及しており、外務省幹部は「会談内容に納得したということだ。来年いよいよ動き出すのではないか」との見方を示す。

 経済界で日中関係悪化への懸念が強まっていたこともあり、政府関係者は「改善が進めば経済にも好影響を与え、来秋の自民党総裁選3選に向けた成果になる」と指摘する。

 ただ、北朝鮮情勢で中国は「対話重視」の姿勢を継続。「最大限の圧力」を日米首脳会談で合意したばかりのトランプ氏も12日にツイッターで金正恩朝鮮労働党委員長について「私は彼の友人になるよう努める。いつかそれは実現するかもしれない!」と投稿した。政府関係者は「米中首脳会談で、習氏に対話を強く求められて影響を受けたのではないか」と懸念を示した。【朝日弘行、加藤明子】