真っ赤に染まった球場で、敵地のファンも一緒になって祝福の拍手を送る。その中心に、巨人の阿部がいた。王手をかけてから4打席目。待ち望んでいた1本は阿部らしい、やわらかく力強いスイングから生まれた。

 九回1死。相手抑えの今村にカウント1ボール2ストライクと追い込まれたが、内角のフォークをすくうように打った。ライナー性の打球は右翼手の前で弾んだ。この試合の最後の打席で記録を達成し「ホッとしている」と笑った。

 正捕手に抜てきされながらリード面で苦しんだ1年目。当時の監督、長嶋茂雄氏は「(阿部を起用し続けるのは)我慢どころじゃなかった。我慢、我慢、我慢」と笑う。それでも、いずれチームを背負って立つ選手になると信じて使った。

 期待に応え、成長していった阿部は「捕手でやってこられたのが、打つ方にもつながった」。巧みなバットコントロールや力強さが光る打撃に、捕手ならではの「読み」も加わり、球界屈指の打者へと育っていった。

 38歳での達成は、決して早くはない。体への負担が大きい捕手だったことで、首や右肩を痛めるなど何度もけがに泣かされた。ただ、その度にはい上がってきた。「とにかく野球が好きだから」。今は捕手としての未練は捨て、打撃を生かすために一塁手として白球を追う。

 「打った時の快感」に魅了されながらたどり着いた節目の大台。阿部は「打てると思っていなかった。打ててしまった、というのが正直な気持ち」と語りつつ、視線は先に向けた。「次は2500本を目指してやっていきたい」。道はまだ続く。【細谷拓海】