【平昌・神足俊輔】16日に始まる平昌冬季五輪のフィギュアスケート男子に、昨年11月のNHK杯の公式練習中に右足首にけがをした羽生結弦(23)=ANA=が出場する。約4カ月ぶりの実戦復帰ながら、男子では66年ぶりの五輪連覇への挑戦でもあり、ファンの期待も高まる。羽生を知る関係者は、けがの回復具合や重圧を案じながら「自分の滑りを」「楽しんでほしい」とエールを送る。

 羽生がエキシビションで使う曲「花になれ」を作詞作曲したシンガー・ソングライターの指田(さしだ)フミヤさん(31)は「ゆづる」「サッシー」と呼び合う仲だ。右足首のけがを知った直後に「大丈夫?」と連絡した。するとしばらくして羽生から「大丈夫。がんばる」と返信があったという。

 指田さんは「花になれ」で「傷ついていいんだ/間違っていいんだ/何度も立ち上がればいい」などと歌う。羽生は出身地の仙台市で東日本大震災に遭った経験から「被災者の一人としても背中を押される」と話しているという。指田さんは歌詞が、けがを克服して戦いに挑む平昌五輪での羽生にも当てはまるように感じている。

 指田さんは最近、所属事務所を移籍。1年間の空白を経て、1月末に復活ライブを開いた。平昌に挑む羽生の姿が自身と重なる。「自分の信じたことを表現していこう」と約束した盟友に向け、「期待があるので大変かもしれないが、とにかく楽しんで。もちろん優勝してほしいけど、後悔がない滑りを」と願っている。

 羽生がフィギュアスケートを始めたアイスリンク仙台(仙台市)の元コーチで、子供の頃から知る都築章一郎さん(80)は、2014年ソチ五輪後の金メダル祝勝会で声をかけた時、羽生が「これでよかったんでしょうか」と言ったことを覚えている。周囲の注目度の急激な高まりや、環境の変化に対する戸惑いと感じた。

 その後も常に世界の頂点に立つことを期待されている4年間を「相当の重圧があっただろう」と推測する。NHK杯でのけがにも「自分なりに集中しきれていなかったのではないか。抱えているものが出てしまったのかな」と心配する。

 都築さんが知る羽生は「未知の世界に挑戦してくれるスケーター」だ。平昌五輪はまさにぶっつけ本番。「そういう中でも、なんとかしようと戦っている。軽々しく『がんばれ』とは言えない。けがだけはしないでほしい」と恩師らしい心遣いを見せた。