約5年ぶりの返り入幕を果たした35歳の明瀬山が、円熟味のある相撲で白星を重ねている。

 立ち合いから、21歳の豊昇龍に攻め込まれたが、慌てることはなかった。腰の重さを生かして土俵際で踏ん張り、じわじわと盛り返す。相手が蹴返しや巻き替えを狙って上体が浮いたのに乗じ、落ち着いて寄って出た。「無我夢中だった。うれしい」と、細い目をさらに細めて汗を拭った。

 愛知県春日井市出身。埼玉栄高、日大と強豪校で鍛え、2008年初場所で初土俵を踏んだ。10年九州場所で新十両となったが、なかなか幕内への壁を越えられなかった。16年春場所でようやく新入幕を果たしたものの、4勝11敗と大きく負け越して1場所で陥落。その後は十両と幕下を行き来した。

 明瀬山は「前に出る体力がなくなった分、右差しを意識している。自分は右差しでしか相撲を取れない」と語る。以前は「攻めが遅い」との指摘を受けてきたが、無理せずに自分の型を作ることを徹底したことで、安定感が増したようだ。4日目に対戦した翠富士は「いつもうまく相手の形にされる。じわじわ攻められる」と熟練の技を評する。

 28場所ぶりの幕内返り咲きは、史上4番目のスロー復帰。最近は若手の活躍がめざましいが、ベテランの技が土俵を盛り上げている。【黒川優】