◇東京大史料編纂所が本格調査に乗り出す

 19世紀に独立国だったハワイ(現・米国ハワイ州)と日本との外交関係を記録した文書が同州立文書館(ホノルル)に大量に保管されていることが分かり、東京大史料編纂(へんさん)所が本格調査に乗り出した。米国による併合から逃れて独立を保つために日本を利用しようとするハワイと、米国をけん制する新興の近代国家日本の姿が浮かび上がる。さらに、詳細が分からなかった移民の実態など、3国の太平洋を挟む裏面史に迫る一級史料の数々だ。

 同編纂所の保谷(ほうや)徹教授(幕末維新史)らのチームが昨年、同館でハワイ王国時代の1861年から、共和国を経て米国に併合される98年までの日本との条約や移民契約、ハワイ外務省と駐日外交官との間の訓令や報告など計約7000点を撮影した。

 ハワイでは93年、米国人農場主らがハワイ王国の転覆を目指すクーデターが発生。日本政府は邦人保護名目で軍艦「浪速」を派遣し、米国をけん制した。翌94年にハワイ共和国成立への祝砲を求められたのに対し、艦長の東郷平八郎大佐は1月16日付の文書で<条例ニ明文無之(条例に明文これなき)>ゆえに応じられないと伝えている。「太平洋戦争」の真珠湾攻撃に先立つこと約半世紀、既に日米による綱引きが垣間見える。

 また、ハワイでは19世紀半ばから白人が大規模なサトウキビ農場経営を始めて労働者が必要となり、68年には日本から初めて契約労働の移民が渡った。「元年者」と呼ばれたが、渡った経緯や労働環境など、不明な点が多い。今回の調査で、駐日ハワイ総領事が横浜にいた日本人商人を通じて移民を確保していたことや、移民たちが搾取されていた様子などが分かった。【鶴谷真】

 矢口祐人・東京大教授(米国史、ハワイ史)の話 非常に貴重な史料だ。ハワイ王国とハワイ共和国を当時の日本政府がどう見ていたかは、あまり研究されていない。また、米国は日系移民の多いハワイを通して日本を気がかりな存在と見ていた。その詳細も分かるのではないか。