【ヨハネスブルク小泉大士】南アフリカのズマ大統領は14日、来年の任期満了を待たずに辞任すると発表した。アフリカ屈指の経済大国であり、BRICS(新興5カ国)の一角を占める南アだが、約9年のズマ政権下で金権体質がはびこり、経済成長率も鈍化。ラマポーザ新大統領は早期にズマ氏に引導を渡し「新生南ア」を国内外にアピールする必要があった。

 ズマ氏は故マンデラ元大統領と共に白人政権下のアパルトヘイト(人種隔離)体制を打倒した元闘士だが、2009年の大統領就任前から知人女性に対するレイプ疑惑や武器不正調達にからんだ783件の容疑で捜査対象になっていた。

 就任後も故郷の私邸改修に多額の公費を流用したことが問題になった。親しいインド系富豪のグプタ家が閣僚人事に介入したり、国営企業との間で次々と有利な契約を結んでいたりした疑惑も発覚した。

 在任中、資源価格の下落もあり経済成長は大幅に減速し、失業率も高止まり。市場からは不合理な政権運営を続けるズマ氏こそが「リスク要因」とみなされ、来年の総選挙を前に与党アフリカ民族会議(ANC)に対する国民の不満もかつてないほどに高まった。

 一方のラマポーザ氏は、1月のダボス会議で、腐敗体質にメスを入れ投資環境の改善に取り組む姿勢を国際社会にアピールした。国内でも汚職の温床となっていた国営企業の役員が更迭され、司法当局も一連の疑惑に関する「グプタゲート」の捜査に着手。15日までにグプタ家の関係先を捜索し、3兄弟の長男を指名手配した。

 「潮目が変わった」(政治評論家)ことでズマ氏の辞任は不可避との見方が広がり、退陣の道筋が焦点に。渋るズマ氏に対し、いかに引導を渡すかが、次期ラマポーザ政権の今後を占う「試金石」として注目を集めた。

 白人政権との民主化交渉で手腕を発揮したラマポーザ氏は当初、「ズマ氏に恥をかかせてはいけない」と繰り返し、ズマ派にも配慮して党の分裂回避を優先する慎重な姿勢だった。だが、退陣交渉が長引くにつれ、ラマポーザ氏の姿勢は国民に「弱腰」と映るようになった。このため、新政権への期待が失望に転じる前に手を打つ必要に迫られたラマポーザ氏は、11日の故マンデラ氏生誕100周年集会で「節目を新たな始まりの機会とする」と強調し、党の全国執行委員会を緊急招集。大統領職からの「解任」を決めてズマ氏を辞任に追い込み、南ア再生に向けた「最初の難関」を辛うじてクリアした。