【ワシントン高本耕太】トランプ米大統領は10日、南部テキサス州南端マッカレンの国境警備事務所などを視察し、メキシコ国境の壁建設の必要性を改めて訴えた。建設に反対する野党・民主党との協議が決裂した場合、議会承認なしで予算執行を可能にする「国家非常事態宣言」に踏み切る可能性にも繰り返し言及した。

 壁建設費が含まれていないことを理由に、トランプ氏が連邦政府の暫定予算案への署名を拒否したことで始まった政府機関の一部閉鎖は10日で20日目を迎え、過去最長の21日間突破は確実な情勢だ。

 トランプ氏は10日、政府機関閉鎖に対応するため、スイスで22〜25日に開かれる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)への出席を取りやめると発表した。民主党との対立の長期化を視野に入れている可能性がある。

 政府機関閉鎖で、職員約80万人が自宅待機や無給勤務を強いられ、政府関連事業者などにも影響が出始めている。10日には首都ワシントンや南部ケンタッキー州など各地で、閉鎖に抗議するデモや行進があり、政府職員や市民らが「職員を人質に取るな。政府を再開しろ」と声を上げた。

 メキシコ国境からの移民流入を「人道、安全保障上の危機」と呼ぶトランプ氏は、ウインドブレーカーにチノパンという被災地を視察する際の服装でマッカレンを訪問し、「緊急事態」を演出した。不法移民に殺害された警察官の遺族らと面会し、麻薬密輸や人身売買の抑止のために「鉄製でもコンクリートの壁でもよいが、強力なものが必要だ」などと語った。

 トランプ政権が議会に求める国境警備関連予算は70億ドル(約7600億円)で、うち57億ドルが壁の建設費だ。壁建設は2016年大統領選で移民排斥を掲げたトランプ氏の「原点」ともいえる公約。建設に固執するのは、米国第一主義に共鳴した支持層をつなぎ留めるためだ。だが、下院の過半数を握った民主党は「壁の建設は問題解決に効果がない」と一歩も引かず、事態収拾のめどは立たない。

 トランプ氏は「壁建設のためなら何年でも政府を閉鎖する」と強硬姿勢を示して民主党に軟化を迫る一方、議会承認を回避する非常事態宣言の検討を進めている。宣言後に予想される違憲訴訟への準備も始めているという。