中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は30日、香港の統制を強化する「香港国家安全維持法」(国安法)案を全会一致で可決・成立した。香港メディアが一斉に報じた。全人代常務委が成立した国安法を同日中に香港に適用する決定を下す見通し。一部香港メディアは、早ければ同日中にも施行されると報じている。香港に50年間保障されたはずの「1国2制度」は崩壊の危機に直面。1997年の返還以来、香港は最大の転換点を迎えた。

 国安法は66条で構成され①国家の分裂②中央政府転覆③テロ行為④外国勢力との結託――の四つを犯罪行為と規定。中央政府が香港に治安維持機関「国家安全維持公署」を新たに設置し、中央の判断により香港で直接、執行力を行使できる。

 香港の法律と矛盾した場合、国安法を優先させると付則で明記。また国安法の解釈権は全人代常務委が握る。国安法に違反したとみられる容疑者は中国当局に引き渡される場合もあるとの見方が出ている。

 中国の強硬姿勢を受け、米議会上院は25日に香港の自治侵害に関与した中国当局者らに制裁を科す法案を可決。今後、下院で可決し、トランプ大統領が署名すれば成立する。

 米国務省も26日にこれらの人物などへの査証(ビザ)発給を制限する制裁措置を発表。米国のけん制にもかかわらず全人代常務委が法案可決に踏み切ったことで、米中の対立が一層激しくなるのは必至の情勢だ。

 香港は1国2制度のもとで「高度な自治」が保障され、香港の法律は通常、香港立法会(議会)での可決を経て施行される。だが、中国の習近平指導部は今回、立法会の可決は必要ないと判断し、制定手続きを進めた。民主派は「1国2制度を破壊した」と激しく反発している。【香港・福岡静哉】