第88回都市対抗野球大会第3日目の16日、県勢のホンダ熊本(大津町)は、1回戦で日本製紙石巻(宮城県石巻市)と対戦、投打がかみ合い4−0と完勝した。昨年、熊本地震の逆境をはねのけて出場したものの、つかむことができなかった大舞台での勝利に、真っ赤に染まったスタンドは熱狂に包まれた。【佐野格、黒川優】

 ▽第一試合

ホンダ熊本(大津町)

  000200101=4

  000000000=0

日本製紙石巻(石巻市)

 緊迫した試合が動いたのは四回。ホンダ熊本打線が試合の流れをつかむ。九州地区予選はケガでフル出場できず「チームに申し訳なかった」という熊丸武志主将が右前打で出塁。川嶋克弥内野手も一塁をしぶとく越す二塁打でチャンスを広げる。1死二、三塁の好機で、大会直前に体調が悪化し、約1週間入院するアクシデントに見舞われたという浜岡直人捕手が適時二塁打を放ち、2点を先取。妻綾香さん(28)=合志市=は「スマートフォンを持つ手が震えた。感動して涙が出た」と大興奮。真っ赤に染まったスタンドも一気にわき上がった。

 岡野武志監督が全幅の信頼を置くエースの荒西祐大投手が先発。初回を三者凡退に抑え、最高の立ち上がりを見せる。その後も得点圏に走者を背負いながら要所を締める投球で得点を許さない。父誠さん(53)は「直球も低めにきている。この投球を続けてくれれば」と大舞台で躍動する息子の姿を見守った。

 大応援団が総立ちになり、「HONDA」と書かれたタオルを掲げて選手を鼓舞。くまモンも登場し、スタンドを盛り上げる。すると打線がつながる。七回1死二塁、長池城磨外野手の適時打で貴重な追加点を奪う。長池外野手の母寿代さん(50)=宮崎県日向市=は「人一倍の努力を見てきた。チームが勝つ力になってうれしい」と笑顔で話した。

 九回にも「初球から打っていこうと思っていた」という稲垣翔太内野手がチェンジアップに鋭く反応し、フルスイング。打球はライトスタンドへ吸い込まれ、4点にリードを広げた。

 荒西投手は終盤に入っても力投を続け、相手にホームを踏ませなかった。九回に最後の打者を打ち取ると、スタンドは歓喜に沸いた。私設応援団の斉藤洋征団長(74)は「うれしい。これで復興を目指す町民の励みになる」と喜んだ。

 ◇若手48人が応援リード

 ○…ホンダ熊本は入社3年目以下の若手48人が応援をリードした。九州地区予選は仕事の都合でほぼ半分ずつのチームでしか応援できなかったため、応援団全員がそろったのはこの日が初めて。最初は恐る恐る連携を取っていたが次第に息が合い、六回には大津町のキャラクター「からいもくん」とのダンスもきっちり決まった。応援団長の田尻健大(けんた)さん(21)は「自分たちは応援することしかできないが、託された役割は全力でできた」と満足げだった。

「次も勝つぞ」

 ◇大津町でPV

 ホンダ熊本の地元、大津町では16日、パブリックビューイング(PV)が設けられた。町民ら約70人が同町引水の生涯学習センターで声援を送り、ホンダ熊本が4−0で勝つと会場は「次も勝利を」と沸いた。

 ホンダが四回、2点を先制すると、来場者は応援用の風船をたたき、七回に追加点を挙げるとさらに大きな声援となった。そして九回表、稲垣翔太選手の本塁打が生まれ、勝利が見えると「やった」「初戦はいただき」と最高潮に。その裏、荒西祐大選手が完封すると会場ではスクリーンへテープが飛んだ。

 娘婿がホンダ熊本の元選手という熊本市北区の田上豊美さん(58)は「野球もホンダ熊本も好き。仕事があるので東京へ行けないから、ここで応援した」と勝利を喜んだ。【杉山恵一】