夏の甲子園第5日の12日、仙台育英は第1試合で滝川西(北北海道)を15−3で降し、2回戦進出を決めた。序盤から2本の本塁打でリードを奪い、18安打の猛攻で圧倒。今春のセンバツ1回戦で福井工大福井(福井)に惜敗した悔しさを晴らした。仙台育英は大会第9日の16日第3試合(午後2時半開始予定)で、日本文理(新潟)との2回戦に挑む。【李舜、森田采花、真田祐里】

 ▽1回戦第1試合

仙台育英

  230023221=15

  000000300=3

滝川西

 佐藤世那投手(オリックス)を擁し準優勝した一昨年以来の夏の甲子園で、毎回安打を記録するなど攻撃力を爆発させた。

 一回表1死二塁、3番・山田利輝(3年)が左越え2点本塁打を放ち先制。三塁側アルプス席の母歩さん(39)は「何とか打ってほしいと思っていたけれど、まさか本塁打とは」と興奮気味に話した。二回にも無死二、三塁の好機で9番・長谷川拓帆(3年)が右越え3点本塁打を放ち、リードを広げる。

 しかし、三、四回は抑えられ、五回も無死二、三塁の場面から簡単に2アウトを取られる。スタンドに嫌なムードが漂う。流れを引き戻したのは、試合前に「家族をはじめ応援してくれた人たちに恩返しができるプレーをしたい」と意気込んでいた8番・斎藤育輝(同)だ。左前へきれいに打球を運び、2点を追加。父明さん(53)は「神宮大会とセンバツで打てていなかった息子が夏の甲子園の大事な場面で打ててうれしい」と顔をほころばせた。

 長短打や相手のミスから五回以降毎回の追加点で15得点。投げては先発・長谷川が六回を投げ無失点。四回まで四球などで毎回先頭打者を出しながらも、粘りの投球で二塁を踏ませなかった。見守った兄駆さん(21)は「甲子園のマウンドで投げている弟が誇らしい」と目を細めた。

 12点リードで迎えた九回裏2死三塁。七回からマウンドに立った佐川光明(3年)に「佐川頼むぞ。しっかり」と声が飛ぶ。ファウルフライを途中出場の一塁手・若山壮樹(同)が捕球し試合終了。スタンドで応援した野球部の伊藤零さん(同)は「全国大会で1勝はこのチームの悲願だった。点差が開いていたとはいえ終わるまではハラハラした。2回戦も初心を忘れずに戦ってほしい」とエールを送った。

 ◇兄たちに声援送る

 〇…三塁側アルプス席には、仙台育英の選手らに交じり、ひときわ大きな声を張り上げている小学生たちがいた。「お兄ちゃん頑張れ!」。斎藤育輝(3年)の弟で小学4年の巡瑠(めぐる)さん(9)と渡部夏史(3年)の弟で小学6年の柚月(ゆづき)さん(11)。選手らと同じユニホーム姿で、心を一つに声援を送り続けた。柚月さんからはミットを構える兄に「ちゃんとチームをリードして」と力強いエールも。

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 ■白球譜

 ◇役目は「つなぐ4番」 仙台育英(3年)佐川光明中堅手

 帽子のつばにフェルトペンで書かれた「夢叶」。正月、部内で「今年の自分の漢字」を書き初めにした。夏の甲子園で全国制覇したい。「夢叶」と書き、「シナリオ」と読ませた。「夢をかなえるためにはシナリオが必要」。最後の夏に向け、課題を一つずつ克服していく過程を大事にしようと誓った。

 春から4番打者。中堅手と中継ぎ投手を兼任する。「大活躍しなくてもいいんで地味でもいいんでチームに欠かせない存在になりたい」。もともとバントヒットや四球を選んでの出塁も多く、「つなぐ4番」を目指した。

 だが、初戦敗退だったセンバツに続き、春の県大会でもチームは準決勝で敗れる。自身も全4試合で1安打。「全然チームに貢献できなくて悔しかった」

 その後は毎晩寮でボール代わりのシャトル打ちに励んだ。佐々木順一朗監督に「小手先」を指摘され、強いスイングを意識した。迎えた宮城大会。準決勝の延長十五回引き分けによる再試合を乗り越え、甲子園の切符をつかんだ。自身も全7試合8安打。「自分にとってもチームにとってもシナリオが実を結んだ」と胸を張る。

 この日は2四球や適時二塁打など6打席中4打席で出塁。2打点を挙げて「つなぐ4番の役割を果たせた」と笑顔を見せた。投げても甲子園の初マウンドで「投げ急いでしまった」ものの、最後は要所を締めた。「一戦一戦試合ごとに成長し、甲子園優勝を狙いたい」。最高のフィナーレに向けたシナリオは続く。【真田祐里、李舜】