稲城市長峰3の増田康雄さん(78)が、写真集「多摩の戦争遺跡」をまとめた。定年退職後、7年がかりで撮った約600枚から78点を選んだ。増田さんは「戦争遺跡の存在を、戦争体験のない若い人たちに知ってもらいたい」と話している。【黒川将光】

 増田さんは音響マンとして働いたNHKを1999年に定年退職すると、好きだった写真にのめり込む。学校に通って撮影を学び、キューバなど海外を訪れては風景をカメラに収め、個展も開いた。

 戦争遺跡を追うことになったきっかけは7年前、都内で開かれた公開講座だった。講師に、太平洋戦争の爪痕を伝える遺跡が次々に消えていくと聞かされ、カメラで記録することを思い立った。

 6歳で終戦を迎えた増田さんは戦時中、中野区の自宅近くに爆弾を落とされた経験があった。偶然、不発だったおかげで生き延びたが、生と死が隣り合わせだった。

 写真集には、終戦10日前の1945年8月5日、八王子市で起きた「湯(い)の花トンネル列車銃撃事件」の現場の「いま」を収めた。市井の人たちを乗せた中央線の列車が米軍機の機銃掃射に遭い、約60人が命を奪われた惨事だ。当時13歳で、この列車に乗り合わせ、いま大田区で暮らしている女性の姿も併せて載せている。

 陸軍に供給する火薬を製造していた「陸軍多摩火工廠(かこうしょう)跡」(多摩市、稲城市)も紹介している。現場は現在、在日米軍に管理されているため、特別に許可を取り付けて撮影にこぎつけたという。

 収めた作品はすべてモノクロ。「人の生き死にを表現するには、それがふさわしい」と考えたという。

 新日本出版社から発売。2300円(税別)。

〔都内版〕