第99回全国高校野球選手権大会に出場する坂井の登場を心待ちにする地元ファンがいる。坂井市の校舎前で食堂を営む池本静江さん(66)だ。2013年のセンバツに出場、坂井に統合された旧春江工の元職員で、甲子園を身近に感じてきた。足が不自由で応援に行けないが、「球児の頑張りは元気の源」と福井から声援を送る。【大森治幸】

 「できたら応援に来ていただきたかった」。今月3日、池本さんが夫と営む「池本食堂」で甲子園出場を報告した坂井の川村忠義監督(43)が気遣うように言うと、池本さんは「家で応援しますから」と丁寧に応じた。

 池本さんは07年から事務職員、川村監督は09年から保健体育科教諭として、春江工に勤務していた。池本さんのいる事務室は、球児のかけ声が毎日のように届く。当時から野球部を指導していた川村監督を見かける度、「甲子園に連れて行ってください」と声をかけ、「甲子園に行くぞ!」と元気な返事を聞くのが楽しみだった。

 だが池本さんは11年、全身が痛む原因不明の症状が出始めた。年末に歩けなくなり翌春、定年退職を迎えた。「多発筋痛症」と診断され、右足大腿(だいたい)骨が壊死し人工骨と入れ替える手術も受けた。

 13年のセンバツはテレビで見守った。「球場で応援したかった」と心残りで、学校も再編された。甲子園の夢が再び現実になったのは坂井のおかげだった。春江工から4キロほど離れていた池本食堂は、14年開校の坂井が偶然にも目と鼻の先。坂井は今年の福井大会で強豪を次々降した。

 池本さんは川村監督が野球部を引き継いだと知っていたが、外出ができずあいさつできないまま。福井大会の後、学校近くで池本さんが働いていると知った川村監督が食堂を訪問。退職後の5年の空白が埋まっていくうれしさを感じた。坂井は大会第6日の第4試合で明豊(大分)と対戦する。池本さんは「全力で応援する」と話している。