同居や介護、相続など、親との関わりがより深まってくる40〜50代。でも、それ以前に「親子の関係」がギクシャクしているとまとまる話も、なかなかまとまりません。そこで、親子の間にわだかまりが生まれるのは、「そもそも親に原因がある」と説く人気心理カウンセラー・石原加受子さんの著書『「苦しい親子関係」から抜け出す方法』(あさ出版)から、苦しみの原因と解決策を連載形式でお届けします。あなたのお家は大丈夫ですか?
pixta_50654912_S.jpg
親が子どもの自立を妨げている
親の世代では、子どもが一人前になると、「親の面倒を見るのは当たり前」でした。とりわけ長男は跡取りとして、親の面倒を見てきました。
しかし、最近では孫も含めた三世代の同居が少なくなりました。母親のほうもまた、一緒に暮らすのであれば「嫁よりも娘」を望み、一緒に暮らさないとしても結婚した娘の「近くに住みたい」と望みます。
とはいえ、仮に子どもにそのような気持ちがあったとしても、今の社会では、自分たちが生活するだけで精一杯だったりします。
以前は、子どもが働き始めると、給料はそのまま家族の収入として家に入れられていました。ところが現在では、親が子どもを経済的に援助している場合も少なくありません。働いていても、家にお金を入れるだけの余裕がないとも言います。
そのような社会的背景のもとでは、親は老後の不安もあって、経済的には援助をしながら、心理的にはいっそう子どもに依存してしまうという現象が起きています。裏を返せばそれは、子の依存性でもあります。
例えば、親が本当の意味で、子どもを頼りにして生きるには、子の「経済的自立」は不可欠です。
ところが無意識のうちに、子どもが自分に依存するように仕向け、子どもの自立を妨げようとする親がいます。
親が過度に生活に干渉していけば、子どもは自立することを非常に難しく感じるでしょう。娘が自発的、積極的に行動しようとするとき、それに難癖をつけたり、足を引っ張ったり、感情的になって反対したりすれば、とても自分の意志を持って行動するどころではありません。
また、そんな親に対して「自分のことを理解してもらおう」としたり、干渉をかわそうと対決すれば、それだけで疲労困憊してしまうでしょう。仕事をする気力さえ起こらないのではないでしょうか。
自立できないのはあなたのせいではない
一方、母親は、自分の依存性が娘に苦痛を与えていることに気づきません。もしかすると適切に指導していると信じているかもしれません。
その挙げ句、「いつまでもプラプラしてないで、少しは、仕事を探したらどうなのよ」などと追い打ちをかければ、娘の自信を根底から奪い去ることができるでしょう。
さらには、「いつまで生活の面倒を見てあげればいいのよ。ほんとなら、あなたが私たちの面倒を見てもいい年齢じゃないの」などと口走れば、娘の自尊心を完膚なきまでに打ち砕くことができるでしょう。
もしあなたが、このような母娘関係で、親から精神的、経済的に自立できないでいるとしたら、それは決してあなたのせいではありません。親が、無意識にそれを望んでいるからです。強烈にそれを望みながら、巧みなコントロールで、あなたが自立できないようにしていったのです。
それでいて、親は、「そんなことしていたら、社会から相手にされてなくなってしまうわよ」などといった"殺し文句"で、そのことをあなたのせいにするかもしれません。
そんな親によって、もしかしたらあなたは今、自分を責めたり、無力感に襲われていたり、激しい自己嫌悪に苛まれたりして苦しんでいるかもしれません。
そうであるなら、なおさら「真実」を知ることです。
それは、決してあなたのせいではありません。母親が、自分の強烈な依存性から、あなたの健全な自立心を砕いていったのです。
そのような母親の強烈な依存性に対し、「母親とは縁を切りたい。もう、二度と会いたくない」と娘が憎悪をたぎらせていくケースも増えています。
自業自得が子を、親を成長させる
ただ、そのような確執であっても、これを解消していくための「原理」はいたってシンプルです。
それは「お互いの自由」を、心から認めること。これに尽きるでしょう。
仮に親の目に、子どもの言動が不適切に映ったとしても、時には、「失敗をする自由」を認めることのほうが重要である場合もあります。
同様に、仮に子どもの目に、親の言動が不適切に映ったとしても、それによって可哀想な結末になったとしても、「可哀想な目にあう自由」を認めるほうが、親自身の心を救うことになる場合も少なくありません。
なぜなら、どんなときであっても、あらゆることで、「自分の選択したことは、いつかは自分にもどってくる」からです。
それは「自業自得」と言い換えることもできます。自分の選択したことの結果を、自分が体験する、ということです。
良い結果も悪い結果も、自分が体験してこそ、心に強く刻まれ、その体験が飛躍的に自分を成長させます。
少なくとも、相手が転ばないようにと先回りして、安全なレールを敷いてあげるより、自分の意志で種を蒔き、自分の責任としてそれを刈り取る経験をしたほうが、はるかに自立心が育つと言えるでしょう。
044-010-087.jpg
これは、「母が娘に」対しても、「娘が母に」対しても、言えることです。
ただし、前記のように、親は、徹底した他者中心の時代に育っています。社会環境も家庭環境も「相手を優先」し、「上に従う」価値観が当たり前のように浸透していた時代です。健全なコミュニケーションの取り方も学習していない時代です。
そんな親が、子どもを理解するのは、至難の業です。それよりも、まずは娘自身が、親からの精神的自立をめざしたほうが、はるかに賢明でしょう。

044-syoei-oyakokankei.jpg親と子の関係がつらくなる心のメカニズムを、言動や社会背景をもとに解説。コミュニケーションの取り方など具体的な対策もまとめられています

石原加受子(いしはら・かずこ)

心理カウンセラー。「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員。現在、メールマガジン『楽に生きる! 石原加受子の「自分中心」心理学』を好評配信中。『つらかった過去を手放す本』(あさ出版)など著書多数。所著は累計100万部を超える。