東京オリンピック・パラリンピックが、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、2021年7月23日から8月8日に延期されることが正式に決まりました。これまで中止となったことはあっても、延期となったのは初めて。ただし2回目の延期は無いというコメントも出されるなど、今後の動向に注目されます。

そもそも、五輪開催による大きな経済効果を見込んでいただけに、延期による影響は相当大きいといえるでしょう。

不思議な?延期決定のプロセス

経済波及効果に多大な期待を寄せていた東京都、日本政府にとっての最大の懸念は、“東京大会の中止”という結論だったことは、延期が決定するまでの政府や都の対応にも、如実に表れています。

たとえば、延期が決まった途端、小池百合子東京都知事は、新型コロナウイルス感染予防対策として、都民への外出自粛要請や、政府に緊急事態宣言発令、それに伴う休業補償の要請を強く求め、及び腰な政府の対応への対決姿勢を鮮明にしています。

ところで、ちょっと違和感があるのが、延期決定までのプロセスです。延期や中止を決定するのはIOC(国際オリンピック委員会)ですが、無関係なはずのトランプ米大統領が延期を示唆し、結果としてその通りになりました。

カタチとしては、TOKYO 2020(東京オリンピック・パラリンピック)組織委員会、IOC、東京都、政府の4者によって延期が合意となったわけですが、開催都市である東京は、この段階までは一歩下がった状態で成り行きを見守っていたようです。

本来、IOCと交渉するのは小池都知事だと思うのですが、なぜか安倍総理とバッハIOC会長との電話会談で正式決定しました。安倍総理にとっては、消費増税による消費の落ち込みを、五輪の経済波及効果で補う目論見だっただけに、なんとしても中止という最悪のシナリオは回避したかったのかもしれません。

それにしても、すっきりとしない延期決定のプロセスですが、スポンサーやテレビ放映権など、五輪に強い影響力を持つアメリカ、安倍首相、バッハIOC会長の思惑が一致して、延期という結論にいたったのでしょう。

莫大な経済損失と新たな費用負担

アスリートファーストなどは二の次で、いまやオリンピックはスポーツの祭典ではなく政治利用の商業イベント化していますが、それよりも気になるのが、延期による経済損失です。

第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストによると、東京オリンピック・パラリンピックの経済効果を、「日本のGDPを1兆7,000億円程度押し上げる」としていました。

それが先送りとなってしまいますが、関西大学の宮本勝浩名誉教授によると、「延期の場合は6,408億円、中止の場合は4兆5,151億円の経済損失になる」と試算しています。

経済効果は、捕らぬ狸の皮算用的なところもありますが、大きな問題となりそうなのが大会経費です。組織委員会によると、大会経費の総額は1兆3,500億円ですが、延期によってそれが大きく上回るのは明らかです。

もし、資金が不足した場合は、都が補填し、都が補填しきれない場合は国が補填することになっていますが、IOCも含めて新たな費用をどこが負担するのかが、これからの大きな課題です。

中止は過去5回でそのうちの2回が日本開催

ところで、長いオリンピック歴史を振り返ると、延期となったことは今回が初めてですが、中止となったことは過去に5回あり、そのうち2回が日本で開催されるはずだったオリンピックというのも、不思議な巡り合わせです。

中止になった理由は、すべて戦争によるものでした。

<夏季>

1916年 第6回大会 ベルリン/第1次世界大戦により中止

1940年 第12回大会 東京/日中戦争により中止

1944年 第13大会 ロンドン/第2次世界大戦により中止

<冬季>

1940年 札幌/日中戦争により中止

1944年 コルチナ・ダンペッツオ(イタリア)/第2次世界大戦により中止

まとめ

2020東京大会は、戦争ではなく新型インフルエンザの感染拡大が延期の理由です。1年後に開催するためには、世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスが収束していることですが、今のところ収まる気配は見えていません。

もし感染拡大が長引くようであれば、3回目の中止も日本ということになってしまいますが、そろそろオリンピックのあり方そのものを、見直す時期に来ているのかもしれません。