2020年5月4日に厚生労働省から公表された、新型コロナウィルスを想定した「新しい生活様式」。

1人1人の感染対策など4つの項目があるうち、「(4)働き方の新しいスタイル」へ対応するには、会社の制度を新しく制定したり変更したりする必要があり、管理部門で働く方の力が不可欠になって来ます。

社内の設備や就業形態、就業規則・人事制度など、管理部門がどのように対応していくべきか。今回の記事では、新たに導入が必要なルールや運用上の注意点について、西方社会保険労務士事務所代表 西方克巳氏にお話を伺いました。

どこまで対応すればよい?「テレワークやローテーション勤務」「時差通勤でゆったりと」

― コロナ禍の緊急事態宣言において、ほとんどの企業がテレワークや時差出勤を余儀なくされました。これを機に新しい生活様式に則ってテレワークに切り替える企業も多そうですが、テレワークや時差出勤を導入するにあたって先生のところにも沢山相談があったのではないですか?
はい。ほとんどのクライアント様から相談がありました。

「テレワーク」は自宅やその他の場所など、オフィス以外の場所で仕事をする働き方、「時差出勤」は定められた範囲内で自由に出社時間を決められる制度で、通勤ラッシュの時間とずらして出社することが可能になります。

また、近年では時差出勤ではなく「フレックスタイム制度」の導入が一般的になってきています。フレックスタイム制度では月間の総労働時間を満たす範囲で、始業・終業時刻を従業員が自分で決める事ができる制度です。

こういった制度が無かった企業様だけでなく、ブラッシュアップを検討する企業様からも多くのご相談を頂いております。

社内の「密」を避ける目的で、テレワークを導入する企業が増加

― 緊急事態宣言中は、外出が出来なかったので時差出勤も難しかったですよね。
そうですね。サービス業の現場や、製造業などで納期があってその場所にいかないと仕事が出来ない業種を除き、一般企業の多くはテレワークに切り替えていましたね。

私のクライアント様では、約90%の企業がテレワークに移行することを検討し、一部の企業が実際に導入を決定しました。

今回のコロナ禍のような状況では、出勤出来ない中でいかに生産性を落とさず、従業員満足も保ちつつ事業運営していけるかがキーになるので、単にテレワーク、時差出勤と言っても企業によって対応は様々です。重要なのは自社にとってベストなやり方を見つけることだと思います。

例えば、先ほど話に出た製造業のお客様には「1か月単位変形労働制」を提案しました。

通常9時―18時が勤務時間なのですが、コロナ以後は9時―18時の時間はそのままに、1日交代で出勤することにしていましたが、それだと、決まった納期に対して動ける人員が単純に減ってしまうので納期に間に合わないのです。

そういう場合には、例えば9時―18時の時間設定を取り払って、もう少し長い労働時間設定をして、その分翌日を休日にするなどの変動的な働き方がマッチするだろうということで「1か月単位変形労働制」を提案しました。

1か月単位変形労働制とは

― 1か月単位変形労働制とはどんな制度ですか?
会社の就業規則に定めて、労使協定を締結し労働基準監督署に届出を行えばスタートすることが出来ます。

1か月単位の変形労働時間制は、1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間以内となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定することにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間を超えたりすることが可能になる制度です。

36協定を結んでいれば設定を超えた時間について残業代も出ますし、対象期間を迎えるまでにシフト作成をし、労働者にシフトを提示します。

先ほどの製造業もそうですし、飲食店で導入している企業が多いですね。

― なるほど。確かに企業によっては良い働き方になりそうですね。製造業や飲食以外の企業ではどうでしょうか?
前述の業種以外の企業でもテレワークやフレックスタイム制度、また時短勤務制度などと組み合わせて導入すれば、オフィスでの勤務時間を短縮したり、自由な労働パターンが生まれると思います。

その企業にあった時間設定や必要な手続きについては、我々のような、法律と他社の取り組み事例に詳しい社労士に相談していただくのが良いと思います。

― 制度をスタートするまでに時間がかかったりしないのですか?
届出などの必要な手続きだけは、最短1週間もあれば出来るのではないかと思います。就業規則も労使協定も、ひな型が厚生労働省から出ています。

ただ、従業員への説明や、社内の仕組みや運用体制を整える等の企業内部の調整にやや時間がかかる場合はあるかもしれませんね。社内の労働時間ルールを変えるわけですから、1か月から3か月の余裕をみていただければと思います。

自社に合った制度を作成し実際に導入も、運用がうまく行かないケースも…

― テレワークやフレックスタイム制度など自社に合った制度が作成でき、労使協定や届け出が済んでも、実際にそれを適用されるのは社員の方々です。運用上、考えられる問題としてはどのようなことが考えられますか?
同じ時間に、同じ場所に全員が集わないことにより、「社員間のコミュニケーション不足」が生じたり、ある業務を担当する社員が不在の時に、他の社員では対応できないといった事態が生じる可能性がありますね。

定期的にWEBミーティングを実施したり、コミュニケーションツールの導入を検討するなど、お互いに連絡を気軽に取れる環境を整えることが必要でしょう。また業務の平準化、マニュアル化をすることで、業務の個人依存を防ぐことで、無駄を削減し、効率化することにもつながります。

また、「押印のために出社しなければならない」といった話は、コロナによる外出自粛期間中にもよく聞かれましたよね。勤務制度等を整えるとともに、業務のシステム化など環境も整えていく必要がありますね。

例に挙げた押印については法務省からQ&Aが発表されていますのでそちらも参考にしてみてくださいね。
※押印についてのQ&A - 法務省

さらに、テレワークにより在宅勤務による「実労働時間の把握が難しくなる」可能性がありますよね。

長時間労働とならないよう、正しい労働時間の把握と管理をするとともに、各社員のタスクを明確にするためにも、クラウドサービスや業務管理システムの導入を検討してみても良いでしょう。

厚生労働省からテレワークにおける労務管理に関するガイドラインも出ていますので参考にしてみてくださいね。
※テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン - 厚生労働省

その他、管理職の立場や部下の管理方法も大きく変わると思われます。今までは、職場内で部下の作業状況を見ることができましたが、テレワークではすべての作業状況を見ることはできません。管理職の方が部下を評価するポイントが、作業結果だけになるのか、今後の課題だと思います。

コロナ以後、変わる働き方の概念
テレワークの必要性やメリットを知って、新しい働き方を

― 緊急事態宣言も解除され、少しずつ外出も緩和されて来ましたが、今後企業の働き方はどうなっていくと思われますか?
引き続き、テレワークは継続されていくと思われます。テレワークを導入すれば、今までフルタイムで働けなかった子育て中の方等も雇用出来るようになりますし、オフィス家賃や通勤手当等の固定費を減らすことも出来ます。

従業員の方からしても通勤時間がなくなるので双方の負担が減って生産性が高まればメリットはたくさんあります。

― コロナウィルスで業績が悪化するなど、コスト削減を余儀なくされる企業も多いと思いますので、固定費を減らせるのは助かりますね。
そうですね。また、テレワーク導入企業に対しての助成金もありますし、他にも毎年色々な施策に対しての助成金が出されています。

企業に合う働き方のスタイルは何かを考慮し、適切な助成を受けられるようにするのも管理部門の方の重要なお仕事になりますね。

是非私たち専門家にも相談していただいて、一緒に企業ごとの新しい働き方を見つけていければと思います。



【プロフィール】
西方 克巳
西方社会保険労務士事務所 代表

「平成15年社会保険労務士試験合格後、大小様々な企業の管理部門にて、勤務社会保険労務士として従事。

平成29年4月1日、東京都新宿区に社会保険労務士事務所を開業。
給与計算から社会保険手続、労務相談、就業規則作成、助成金申請まで幅広く対応。
WEBサイトはコチラ

東京都社会保険労務士会会員 登録番号第13090084
一般社団法人社労士成年後見センター東京 正会員
東京都社会保険労務士会 新宿支部 研修委員長
東京都社会保険労務士会社労士110番相談員」

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