働き方改革ではこれまでワークライフバランス、ダイバーシティ、リモートワーク、フレックスタイム、時短勤務、育児・介護休暇、副業・兼業などが主に話題になってきました。そんな中で新たな話題になっているのが「ギグワーカー」です。

彼らはどんな働き方をしているのでしょうか。またこの働き方には、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

ギグワーカーとは何か

ギグワーカーとは、インターネットの「クラウドソーシング(不特定多数人材への業務委託)仲介サイト」を通じて単発業務のギグワークを請け負うビジネスパーソンのことです。

日本のギグワーカーの大半はフリーランサーや個人事業主ですが、副業としてギグワークをしている会社員も一定数います。

ギグワークを簡単に説明すると、クラウドソーシング仲介サイトのマッチングなどで、発注者(企業)の単発業務を受注者(ギグワーカー)がその都度業務を請け負う仕組みです。業務請負契約は発注者も受注者もギグワーク仲介会社(クラウドソーシング仲介サイト)と交わすので、発注者と受注者の間には契約関係がないのが通常の業務請負と異なるところです。

ギグワークは2010年代半ばにアメリカで生まれた新しい就業形態です。配車サービスの「Uber」、レストランの料理宅配サービス「Uber Eats」、民泊施設仲介サービスの「Airbnb」、家事代行サービスなどがギグワークの代表例といえます。

日本経済新聞電子版は、日本のギグワーカー(日本の主要クラウドソーシング仲介4サイトへの登録者数)は2020年5月末現在、すでに約700万人(全就業者数約10%相当)に達すると報じています。(2020年6月23日付)

なおギグワークは、ライブハウスやクラブハウスのフィナーレでの、出演者たちによる1回限りの即興的な協奏を意味する音楽業界のスラング「Gig」に由来しています。

ギグワーカーはどんな仕事をしているのか

アメリカではギグワーカーが労働市場に定着しており、ギグワーク専業者が少なくありません。一説によると、アメリカでは2020年までに就業者全体の43%をギグワーク専業者が占め、その約40%が年収10万ドルを超えるといわれています。

もちろん、これら高収入ギグワーク専業者は、日本でいえば士業クラスの高度な専門スキルと資格・博士号を持ったビジネスパーソンたちで、アメリカのギグワーク専業者すべてが高収入という訳ではありません。

ギグワークは日本の場合、BtoC分野ではレストランの料理宅配、家事代行、便利屋など以前からある生活サービス系業務が大半です。

BtoB分野では各種データ入力、テレアポリスト作成、顧客リスト管理、企業アーカイブズの資料整理、街頭アンケート調査などの補助的業務からWebサイトデザイン、工業デザイン、チラシ・カタログ等印刷物デザイン、翻訳・通訳、映像制作、スマートフォンアプリ開発、能力開発等各種企業研修インストラクター、スタイリストなどの技能系業務までかなり広範です。業務範囲の広さに限っていえば、人材派遣とほぼ同じといえるでしょう。

実際、日本のクラウドソーシング仲介サイトがマッチングしているBtoB分野のギグワークは200業務以上あり、BtoB業務のかなりの部分をカバーしている事実がうかがえます。

これは日本の企業でもビジネスプロセスの標準化による業務のユニット化やリモートワーク導入が進むなど、ギグワークを発注しやすい環境が整ってきたのが背景と見られています。

ギグワークのメリット・デメリット

ギグワークのメリット・デメリットは、一般に次が挙げられます。

●企業側のメリット

・高いコストをかけて育成しなければならない人材を比較安価なコストでオンデマンド的に確保できる

・普段は必要のない特定スキルを持った人材をオンデマンド的に確保できる

・総人件費を抑制できる

●企業側のデメリット

・ギグワーカーの労働品質や業務品質の信頼性を見極めにくい

●ギグワーカー側のメリット

・自分の裁量で就業時間や就業期間を決められるので自分の都合に合わせた柔軟な働き方ができる

・特定企業の特定業務に拘束されず、クラウドソーシング仲介サイトから自分の気に入った業務のみを選ぶことができる

・本業の収入源を補足する副業の就業に適している

●ギグワーカー側のデメリット

・案件受注は競合なので報酬の最低保証がない

・就業チャンスが保証されていないので専業の場合は失業リスクがある

・一定の収入を確保するためには案件掛け持ちの長時間労働が避けられない

・収入が不安定なので老後を含めた生活設計を立てにくい

・就業の継続性がないのでキャリアデザインを描きにくい

・会社員のような能力開発研修やOJTの機会がないので自分のスキルや労働市場価値を高めるのが難しい

・労災、報酬不払いなどのトラブルは自己責任で解決しなければならない

まとめ

ギグワークの魅力を突き詰めていえば、企業側の場合は一時的に必要な人材確保の利便性にあるといえるでしょう。ギグワーカー側の場合は会議・打ち合わせ・報告書作成等の報連相や各種資料作成等の雑用に煩わされず本来業務のみに専念できることでしょう。

しかしながらギグワークは発展途上の就業形態なので、発注側・受注側の双方が様々な問題を抱えています。場合によっては魅力がリスクになるケースもあるでしょう。加えて既存の就業形態と異なり、法整備もされていないのが現状です。それでもインターネットが可能にしたギグワークは、働き方イノベーションの可能性を秘めているといえるでしょう。

そんな中で、企業側はギグワークを単なる人件費削減手段や特定スキルを持った人材を臨時的に確保する便利な手段として捉えるのではなく、業務全体の最適化による一人当たり労働生産性向上と収益拡大を図る戦略的人材マネジメントとして、ギグワーカーをいかに有効活用するのかが重要と思われます。

ギグワーカー側も、スキルアップに関する企業の支援を得られない中で自分のスキルをいかにして磨き、自分の労働市場価値をいかにして高めるかが、これからは重要になるでしょう。