人事管理システムは従来、社員数300人規模以上の大企業で主に導入されていました。社員数の少ない中小企業の場合は、表計算ソフトなどによる紙ベースの管理で十分とされていたからです。しかし働き方改革推進を背景に、近年は中小企業でも優秀な人材確保を目的にした雇用形態や勤務形態の多様化が進んで人事管理業務が煩雑化、人事管理システムを導入する企業が増加傾向にあるといわれています。人事管理システムを導入すると、人事管理業務の何が変わるのでしょうか。

人事管理システム導入増加の背景

人事管理システムとは、人事評価、人材採用、人材開発など多岐にわたる社員個別の人事データを一元管理できるITツールのことです。

近年これまで以上に、社員のスキルや業務経験に基づき人材配置の適正化を図るタレントマネジメントが重要視される中人事管理を適正に行うためのシステム導入が増加しています。

そもそも「人事管理」とは企業の経営目的達成のために社員を組織的に管理すると同時に、継続的な人材育成を図る仕組みのことをいいます。

人事管理の目的は、一般に次の4つとされています。

・経営に必要な人材の確保と育成

・社員の能力を最大限に発揮できるようにするための適切な人材配置

・継続的体系的教育・訓練による社員の能力開発

・処遇の適正化による人材活性化

かつての新卒採用・年功序列・終身雇用をベースにした全社一律型の雇用形態や勤務形態の下では、これらの目的達成に向けた人事管理は紙ベース(表計算ソフト使用を含む。以下同)でも比較的容易でした。

ところが中途採用者や派遣社員・契約社員の増加、能力給制導入、フレックスタイム制や時短勤務制の導入、テレワーク制導入、育児・介護休暇の取得拡大など雇用・勤務形態が多様化してきた近年、人事管理が極めて複雑・煩雑化し、従来の紙ベースでの人事管理が困難になっています。

このため、社員個別の人事データを一元管理できる人事管理システムの導入が、大企業はもとより中小企業でも不可欠な状況といわれています。

紙ベースでは得られない人事管理システム導入のメリット

人事管理システムは、システムを自社運用するオンプレミス型とシステム運用をベンダに委託するクラウド型に大別されます。一般にオンプレミス型は大企業向け、クラウド型は中小企業向けといわれています。しかし人事管理システム導入のメリットは、基本的にいずれのタイプも同一といえます。具体的には次のメリットが挙げられます。

●人事管理の効率化

社員個別の人事データを一元管理できるのが、人事管理システム導入の第一のメリットといえます。

紙ベースの人事管理では、人事評価、人材採用、人材配置・異動など様々な人事データを別々のファイルで管理する必要があったため、特定社員の人事データを確認する際は各ファイルから必要データを抽出する、付け合わせるなどの煩雑な作業が発生していました。

人事管理システムを導入すればこのような作業を省略でき、人事管理の効率化が可能になります。

●人事データの可視化

人事データの一元管理により、人事データの可視化も可能になります。

人事データの可視化が可能になると、数値だけでは分からない人事評価、人材配置、人材育成など、人事管理の諸々の問題点発見や他部門との問題点解決のための情報共有が容易になり、人事管理の適正性向上を図ることができます。

●人材採用活動の最適化

人事データの一元管理により、人材募集から採用までのプロセスや面接の際の評価が、一気通貫で把握できるようになります。各種関連事項との関連付けも可能です。

それにより人材採用データの蓄積と分析も可能になります。この「データ蓄積と分析」は、新たに人材採用活動をする際の適切な内定辞退防止対策や応募者個別の選考方法設定・評価などに応用でき、人材採用のミスマッチ防止率も高まる可能性があります。ひいては人材採用コストの削減にも繋がるでしょう。

●創造的な業務への専念

人事管理にまつわる様々なデータの入出力、抽出、突合、計算、保管などの煩雑で単純な作業はすべて人事管理システムで処理できるので、人事担当者は戦略的な人事評価システム設計、人材開発システム設計など、人事担当者本来の創造的な業務に多くの時間を振り向けられるようになります。

人事管理システムを導入する際に気を付けたいこと

人事管理システムは、人事管理業務効率化に資する共通機能にベンダの独自開発機能を付加した様々なITツールを、ベンダ各社が提供しています。各ツールの優劣や自社との適合性はベンチマーク的に論じられないのが現状です。

したがって、導入目的が明確でなければ人事管理システム導入の効果は得られず、コストだけがかかる結果に陥るリスクもあるでしょう。

この「導入失敗」を防ぐためには、自社の人事管理業務を洗い出し、どの業務にどの程度の時間とコストがかかっているのか、人為ミスが多い業務は何か、問題と思われる人事管理フローは何になどを検証し、「何のために人事管理システムを導入するのか」をまず明確化する必要があります。

その上で自社の人事管理目的とその効率化に有効と思われるITツールを選び出し、それを提供しているベンダ各社に詳細な説明を求めるなどの手順を踏まえ、導入するシステムを決定する必要があります。

まとめ

雇用形態と勤務形態の多様化が進む中、人事管理の単純作業も高度化・複雑化の傾向を強めています。適切な人事管理システムの導入は、高度化・複雑化傾向を強める人事管理の単純作業負荷を人事担当者から解放し、人事担当者本来の創造的な業務に向かわせる経営上のメリットもあります。

その一方で、人事担当者にはこのITツールを使いこなす知識やスキルも必要になっています。このため人事担当者は、HRテックに関する基礎知識も不可欠な時代といえるでしょう。