新型コロナウイルスの影響で、今年は採用に消極的な企業も増えていますが、企業の発展と存続には優秀な人材の確保が欠かせません。「3密」を避けるため、会社説明会も就職希望者との面接もなかなかできない状況で、各企業も採用には知恵を絞っているようです。

優秀な人材の確保といっても、今後、若年層の人口が減少していき、人材の争奪戦はますます激しくなることが予想されます。

そこで、最近注目を浴びているのが「リファラル採用」です。新型コロナ対策がきっかけではありませんが、若年層の人口減少への対策として、導入する企業が増えています。

新型コロナ対策で従来のような大規模な採用試験の実施が難しいなかで、リファラル採用はさらに企業の間で浸透していくのでしょうか。


注目を集めるリファラル採用とは

リファラル(referral)とは、「推薦・紹介する」という意味の英語で、社員の紹介による採用のことです。日本ではあまり馴染みがありませんが、欧米では一般的な採用方法だそうです。

日本でも「縁故採用」がありますが、縁故採用とは社員や取引先の子供、親類らを、会社と関係があるという理由で採用することです。しばしば、正規の募集とは別枠で採用されることがあり、度が過ぎると、ほかの社員のモチベーションを下げてしまうことがあります。

これに対してリファラル採用では、社内の実情をよく知る社員が、会社で活躍できそうな人材を会社に紹介します。紹介という意味では縁故採用の一種ともいえるのですが、能力や適性があることが前提であり、会社もしっかり人物評価をしたうえで、採否を決めます。

そのため、せっかく紹介しても選考で落とされることがありますし、採用されても「聞いていた話と違う」とトラブルになることもあります。この辺りが、縁故採用でよくある「伝手を頼りになんとか採用させていただきました」というケースとは、事情が異なります。

また、リファラル採用では、紹介した社員に対して、謝礼金や特別報酬が払われることもあります。

こうしたリファラル採用を導入する企業は日本でも増えていて、トヨタも中途採用でリファラル採用を始めました。ただし、トヨタの場合は社員から詳しい業務の内容や社内環境に話を聞けるというだけで、採用の選考は通常の中途採用と同じように進められ、紹介社員への報酬もないようです。

また、日本経済新聞電子版(2020年1月21日)によると、USJを運営するユー・エス・ジェイはアトラクションの技術者などの採用でリファラルを導入。農機具のヤンマーも開発職でリファラル採用を始めました。一般採用では獲得が難しい高い専門性のある人材を募るのが目的です。

リファラル採用を活用している企業として国内で最も有名な企業の一つが「メルカリ」でしょう。メルカリではリファラル採用をメインとしていて、幹部社員も社員紹介で採用していることが知られています。

リファラル採用について、メルカリの小泉社長は日経ビジネスの対談で「10人採用するのなら、10人に声をかけたい。それが最も無駄がない」と述べ、大量に人を募集してふるいにかけるようなやり方は、起業したばかりの会社にはできないなどと説明しています。

また、メルカリの人事担当者は講演で「人の紹介だから、みんなちゃんとした人を紹介するし、紹介されたほうもちゃんと、面接に来ていただている」とミスマッチが少なく、社会的常識をわきまえている人を集められることをメリットとしてあげています。

リファラル採用に積極的な会社は、能力の高い経験者を効率的に中途採用できる方法として捉えているようです。

リファラル採用のメリットとデメリット

有効な採用方法として企業の間に浸透しつつあるリファラル採用ですが、具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

まずはメリットをあげてみましょう。

1.人材のミスマッチをふせぐことができる

実際に会社で働く社員が、会社にふさわしいと思う人材に声をかけ、仕事の内容や待遇、社風などを説明したうえで会社に紹介するのですから、会社が求める人物像にマッチした人を採用できる可能性が高まります。

働く側にとっても「事前のイメージと違った」ということが少なく、採用したものの会社の水に合わずすぐに退職してしまうという事態も避けられるでしょう。

2.採用コストを削減できる

通常の採用では、できるだけ多くの希望者を募るため、求人誌や求人サイトに求人広告を載せ、転職エージェントに募集を依頼します。また、説明会の開催、筆記試験や面接などに多大な労力と費用がかかります。

しかし、リファラル採用であれば、こうしたコストをあまりかけずに採用できます。社員の紹介があった時点で、ある程度の適性や能力は見込めるので、応募者を不採用にするコストが削減できるともいえます。

3.転職サービスに登録していない人にアプローチできる

能力が高く、現場の一線で働く人は、現在の仕事に満足し転職サービスなどには登録していないかもしれません。リファラル採用であれば、そうした人材に社員を通じてアプローチすることができます。

リファラル採用は、社員の人的つながりを活用した採用方法なので、転職への関心が低い人にもアプローチでき、その精度も高いといえるでしょう。

しかし、リファラル採用には以上のようなメリットだけでなく、デメリットもあります。

次のようなデメリットを考慮しておくことが必要でしょう。

1.不採用の場合、推薦した社員が信頼を損なう

社員から推薦があったとしても、必ず採用されるとは限りません。不採用となった場合、推薦した社員と不採用者との人間関係が損なわれる恐れがあります。このため、推薦した社員が会社に不信感を抱くこともあるでしょう。

2.採用後に2人が同時に退職することがある

推薦した社員が退職したとき、誘われたほうも一緒に退職してしまうことがあります。逆に、推薦されて入社した社員が退職したため、責任を感じて推薦した社員まで辞めてしまうケースも考えられます。以上のような事態は会社にとってダメージが大きいといえるでしょう。

3.似たような人材が集まりやすい

マッチングを重視した採用になるため、同じようなスキルや価値観を持った人材が集まりやすいと考えられます。新しい人材、組織に刺激を与えられるような人材を求める場合は、別の方法を考える必要があるかもしれません。

まとめ

リファラル採用は、いわば社員全員がリクルーターとなり、優秀な人材を発掘する方法です。

やり方によっては、メルカリのように効率よく優秀な人材を集め、急成長することもできるでしょう。

しかし社員が知人や友人に推薦する以上は、本当に働きやすくて、他人に勧められる職場でなくてはなりません。会社に不満のある社員は、決して自分の知人を会社に推薦しようとは思わないからです。

リファラル採用を成功させる鍵はただ一つ。社員に愛され、働くことに誇りを持てる会社になることなのかもしれません。