厚生労働省が公表している資料によると、令和元年の日本における自殺者は、2万169人となっています。平成22年以降、10年連続で自殺者数は減少しており、昭和53年から始めた統計で過去最小の数字です。

一方、世界全体では、毎年約80万人が自殺で命を落としているといわれています。自殺は依然として、15〜29歳の死因の第2位であり、その大部分は低・中所得国で発生しています。

日本や海外では、自殺に対してどのような取り組みが行われているのでしょうか。代表的な成功事例と併せて、日本の自殺対策に関しても解説します。

国連・世界保健機関による自殺予防ガイドライン

1991年、国連総会において、自殺問題の深刻さが認識され、国レベルで自殺予防の具体的な行動を開始することが提唱されました。国連はWHO(世界保健機関)の技術的支援を受け、「自殺対策:国家戦略の策定と実施のためのガイドライン」と題する文書を公表しています。

現在、WHO加盟国は「世界精神保健行動計画2013-2020」において、2020年までに各国の自殺死亡率を10%減少させるという世界的目標に向けて尽力している状況です。この自殺死亡率は「持続可能な開発目標(SDGs)における保健医療目標3」の指標の一つでもあり、その詳細は「2030年までに、予防や治療を通じて、非感染性疾患による早期死亡率を3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する」となっています。

また、WHOは、自殺を防ぐ取り組みにおいて、各国政府による積極的な関与無しでは目標の達成は見込めないという認識を示しています。

国家自殺対策戦略の成功事例

・フィンランド

国レベルの自殺対策が功を奏した例としては、フィンランドの取り組みがよく挙げられています。フィンランドは、北欧における高福祉国家の一つであり、2018年には国連のレポートで世界一幸福な国にも選ばれていますが、自殺率はいまだに決して低くありません。

歴史的に自殺率が高かったフィンランドは、国連のガイドライン公表より前から、国レベルで自殺対策に取り組んでいます。国内における自殺者の約8割が、うつ病やアルコール依存症を患っていることをつきとめ、適切な治療が受けられる体制を整えた結果、十数年かけて自殺率を約30%低下させることに成功しています。

・イングランド

現在、イングランドの自殺死亡率は過去最低水準にあり、ヨーロッパ各国の平均値と比べても低めです。1980年代には7,000人に迫る自殺者数を記録していましたが、現在は減少傾向にあり、精神保健サービス利用者や入院患者の自殺率も低下しています。

イングランドにおける自殺対策の成功の背景には、関係機関からの幅広い支援を受けたことや、政治の指導者やメディアを動かしたこと、最新のデータやエビデンスを活用したこと、自殺対策を他の精神保健政策と関連付けたことなどが挙げられます。また、2018年には自殺防止担当相を新設し、政策を次々と発表しています。

現在は、依然として上昇傾向にある若者の自殺防止対策に力を入れています。さらに、オンライン上の安全対策、保健医療従事者のストレス、ギャンブル依存、ソーシャルメディアなど、新しい課題への対策にも対応している状況です。

・韓国

韓国では、2011年に制定・施行された「自殺防止法」及び「生命尊重文化の創造」により、わずか3年の間に自殺率を13.8%低下させることに成功しています。国家としての自殺対策の効果が立証された結果であり、政府や関係者の努力が実った結果であるといえます。

しかし、韓国の自殺率は、OECD加盟国では2004年以降1〜2位が続いています。1997年の通貨危機や、若者が重圧を受けやすい風潮などが、自殺者の多い原因として指摘されている状況です。

今後の対策としては、中央レベルの自殺予防政策システムの整備や、「自殺は個人レベルの問題であり防ぐことは不可能」という社会認識の改善を進め、人口10万人あたりの自殺死亡率を2014年の27.3%から20.0%に低下させることを目標に掲げています。

日本の自殺対策

日本では、1998年以降、自殺者数が毎年3万人を超えるという深刻な状況が続いていたこともあり、2006年に「自殺対策基本法」が制定されました。また、2016年には、都道府県と市町村に自殺対策計画を義務付ける内容の改正が行われています。

2017年には「自殺総合対策大綱」が閣議決定され、「地域レベルの実践的な取り組みの更なる推進」「若者の自殺対策や勤務問題による自殺対策の更なる推進」「2026年までに、2015年と比較し30%以上減少させる」などの目標を掲げています。

自殺死亡率は着実に低下しているものの、20歳未満の自殺率は、1998年以降おおむね横ばいです。また、20歳代や30歳代における死因の第1位は自殺であり、自殺率も他の年代に比べてピーク時からの減少率が低くなっているのが現状です。

まとめ

自殺の原因と考えられることは、国によってさまざまであり、国ごとに抱える個別の諸問題が自殺につながっていると考えれば、対策も国レベルで取り組むべきといえます。

各国政府は、全国民に対し、包括的かつ多様な自殺対策戦略の策定を牽引していくことが不可欠です。