感染拡大が収まらないコロナ禍において、「ニューノーマル」という言葉をよく聞くようになりました。ニューノーマルとは、社会に大きな影響を及ぼす出来事によって生まれた「新しい日常」「新常態」のことを指します。

もともとは2007年から2008年にかけての世界金融危機や、2008年のリーマンショックに端を発する大景気後退後における金融上の状態を「ニューノーマル」と呼んでいたのですが、新型コロナウイルス感染症によってもたらされた今回は3度目ということになり、広く日常生活にまで及んでいることが特徴としてあげられます。

そうした中でビジネスの現場においても、ニューノーマルにふさわしい働き方が模索され、実践されるようになってきました。


ニューノーマルにふさわしい働き方とは

厚生労働省は新型コロナウイルス感染症専門家会議からの提言を踏まえ、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しています。その中には、基本的な感染対策(身体的距離の確保、マスクの着用、手洗い)や日常生活における新しい生活様式と並んで、働き方の新しいスタイルとして次の5項目が示されています。

●テレワークやローテーション勤務

●時差通勤でゆったりと

●オフィスはひろびろと

●会議はオンライン

●対面での打合せは換気とマスク

これらの働き方は、「密閉、密集、密接」の三密を回避し、ソーシャルディスタンスを確保するという基本的な感染対策に準じるものであり、業種別に策定されている感染拡大予防ガイドラインと併せて、すでに多くの企業で導入・実践されています。

通信インフラとICT機器の発達・整備によってオンライン会議やテレワークが可能となったことから、オフィスに出社しないで仕事をこなす在宅ワークのほか、家から近い場所のサテライトオフィスやホテルを利用するといった、働く場所の選択肢も増えています。

こうした働き方の変化に合わせ、これまで支給されてきた通勤手当の代わりに、従業員が負担する通信費やICT機器の充実のためにテレワーク手当を支給するといった制度を見直す企業も増えています。さらに、働き方改革の推進と併せて休暇制度を見直し、週休3日制を導入する企業が出てきたほか、企業によってはオフィス自体を郊外や地方に移したり、副業を認めたりする動きがあることも、ニューノーマル時代の働き方の変化といっていいでしょう。

多様化する働き方

働き方の多様化の一つに、「ワーケーション」があります。「ワーク」(労働)と「バケーション」(休暇)を組み合わせた造語で、仕事と休暇を両立させる新しい働き方として注目を集めています。リゾート地や温泉地にある別荘やホテル・旅館に宿泊しながらテレワークを行うというもので、コロナ禍で落ち込んだ観光需要を回復させるという点から観光庁を中心に政府からも推進の声があがっています。

BIGLOBEが行った「ニューノーマルの働き方に関する調査」によると、ワーケーションを「してみたい」と回答したのは全体の6割、20代と30代では7割弱が希望するという結果が出ています。また、地方創生に対するプロモーションを手がける株式会社ビートルが行った「ワーケーションに関する意識調査」では一般女性の86.4%がワーケーションを「してみたい」と回答するなど、若年女性層を中心にワーケーションに強い興味があることが分かっています。

それとともに、出張の前後に休暇を組み合わせ、出張先の周辺で観光や旅行を行う「ブレジャー」も、新たな働き方および休暇のスタイルとして話題となっています。ちなみにこちらもワーケーション同様、「ビジネス」(仕事)と「レジャー」(余暇)を組み合わせた造語です。

これらの新しい働き方を実践できるかどうかは、当然ながら会社の制度が整っていることが前提であり、またワーケーションにおいては宿泊先の通信環境が整っていることが条件となります。デジタルベースで完結するIT業界などでは実施しやすい反面、そうではない業種があることも事実です。

まとめ

政府がとりまとめた「ニューノーマル時代のITの活用に関する懇談会最終報告書」によれば、ニューノーマル時代の基本的な社会の姿は、リアル空間とサイバー空間の融合による「繋がる」社会であり、国土全体をカバーするデジタルインフラ整備が欠かせないとされています。

すでに始まっている5G通信や、開発が進められている6G通信に代表されるデジタルインフラが整えば、今以上にテレワークやワーケーションのように働く場所や環境にとらわれない多様な働き方が全国どこにいても可能になります。たとえ新型コロナウイルス感染症が終息したとしてもオールドノーマルに後戻りすることは考えにくく、ニューノーマルへの移行が進むと考えられます。その波に合わせて働き方も大きく変わっていくことから、企業においても関連制度の見直しや社内規定の整備が急務といえます。