1990年代にアメリカの経済学者デイブ・ウルリッチが提唱した「戦略人事」が注目を集め、世界の有名企業で導入が始まっています。しかし、日本ではまだ導入する企業は少ないようです。そもそも「戦略人事」とはどういうものなのでしょうか。

経営戦略を遂行していく経営者のパートナー

「戦略人事」とは「戦略的人的資源管理(Strategic Human Resources Management)」の略語で、人事部は経営者のパートナーであり、人事や組織を活用し経営者とともに経営戦略を遂行していく、というものです。

これまでの人事業務といえば、管理的業務が主流で、攻めの営業部署に対して、人事は守りの部署というイメージだったのではないでしょうか。

しかし、戦略人事には企業の経営目標や経営計画の実現と人的マネジメントを関連付ける、従来の人事部の業務にはない“攻め”の視点が盛り込まれていま。人事や組織を活用し、経営者とともに経営戦略を遂行していく経営者のパートナーという位置づけです。

導入のメリットは経営状況の変化にスピーディーに対応

戦略人事を導入するメリットは、経営状況に応じてスピーディーに人材を配置することができるようになることです。

たとえば、攻めの経営を展開し急成長を遂げている企業には、総務部や財務部などの管理部門の人材を手厚くするなど、社内体制の整備が求められるようになります。

従来の人事部が行っている人材配置では、攻めの経営戦略に求められるスピーディーな人材配置に、対応することが難しいケースもあるのではないでしょうか。スピード感を重視する経営にとくに向いているのが、戦略人事といえそうです。

戦略人事の導入が進まない理由

戦略人事を導入することで、人事部門が企業の経営戦略に積極的に関り、企業の競争力を高めるなどのメリットがあります。しかし、従来の守りの人事から、攻めの戦略人事へのシフトは、そう簡単なことではありません。

日本の人事部の「人事白書2016」によると、95%の企業が「戦略人事は重要であると感じる」と回答していますが、自社の人事部が戦略人事を展開している」企業は26%にとどまっているように、導入には超えなければならないハードルもあるようです。

戦略人事の導入を阻んでいるのは、経営者と人事担当者の戦略人事への理解不足です。経営者の理解がなければ、人事担当者から戦略人事の提言があっても受け入れることはできないでしょう。また、担当者が理解していなければ、「攻めの人事」を提言することもできません。

また、従業員の意識改革も必要です。変化を嫌う従業員は、戦略人事に非協力的に姿勢や、導入に抵抗することもあるようです。終身雇用や年功序列、企業別組合といった、旧来の制度が残っている企業では、戦略人事が浸透しにくいともいわれています。

人事部に求められる戦略人事導入への考え方

戦略人事の導入は、旧来型の制度や企業風土が残っている日本では、そう簡単なことではありません。人事部には、これまでの後方支援型の人事業務ではなく、経営戦略に積極的にかかわっていく姿勢が求められます。

そのために必要となるのが「人事担当者が経営者のビジネスパートナー(BP)になる」、「企業理念を全社員に浸透させるOD&TD(組織開発&タレント開発)」、「CoE(センター・オブ・エクセレンス)な人事部」「給与計算や入社事務、退社処理など、個別具体的な人事業務をスピーディーにこなすOPs(オペレーションズ)」の4つです。

戦略人事の導入が難しい企業は、コンサルタントやツールなどの“外部の力”を活用する方法もあります。

先が見通せない時代となりましたが、企業が確実に前進していくためにも、従来の概念から脱却し、攻めの人事部に取り組み、経営戦略にもコミットする人事のプロフェッショナルを目指してみてはいかがでしょうか。

まとめ

守りの人事で生き残ることができた時代もありました。しかし、経営環境の急変や競争激化が顕著ないま、人事にも企業の変革を牽引していく姿勢が必要です。戦略人事が求められるようになっている背景には、時代の変革期があるのではないでしょうか。

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