管理部門への転職やキャリアアップを目指すときに、有利な資格はどのようなものがあるでしょうか。この記事では、経理、人事、法務の三つの部門で評価を得やすい資格とその内容を紹介します。

経理

【日商簿記検定】

日本商工会議所が実施している検定です。簿記とは、企業規模の大小、業態を問わず、経営活動を記録・計算・整理して経営成績と財政状態を明らかにする技能です。簿記の基礎知識が得られる3級の合格率は2021年2月の実績で67.2%、財務諸表が読めるようになる2級は8.6%でした。会計士や税理士の登竜門となる1級は7.9%です。

1級は会計のスペシャリストを目指すもので、難易度はかなり高いものとなります。一般的な企業で経理としてのステップアップを望むのであれば、2級にチャレンジすることをおすすめします。2級を取得するために必要な勉強時間は350時間程度といわれています。

【FASS検定】

経済産業省が開発した「経理・財務サービス・スキルスタンダード」をベースに、経理・財務分野の実務知識・スキルの習得度を測る検定試験です。合否ではなく、A〜Eの5段階で評価をします。

資産・決算・財務・資金の分野ごとに評価が出るため、どこに課題があるのかをつかむことができます。実務レベルで評価されるよう開発されているため、経験が長いほど高スコアが出ることに特徴があります。会計士や簿記の資格取得者が受験しており、簿記よりも実務に徹している試験といえます。

【給与計算実務能力検定】

一般社団法人職業技能振興会と一般社団法人実務能力開発支援協会が実施している検定試験です。給与計算業務の知識・実務能力を客観的に判断し、給与計算業務のエキスパートとして認定する試験です。給与計算業務を行うためには、社会保険の仕組みや労働法令、所得税・住民税等の幅広い知識が必要となります。実務で使える広範な知識の習得を目的としています。

2級の合格率が2020年11月の実績で74.3%、1級が56.9%でした。1級で60時間程度の勉強時間が必要です。

【公認会計士】

会計監査のプロフェッショナルになるための国家資格です。監査法人で働く人が多いイメージですが、事業会社の経理として働くケースも多く見受けられます。公認会計士の資格を持っていれば、決算や開示業務などの高度な会計知識が必要な仕事を任されることが多くなるでしょう。IPOやM&Aのような、企業の一大イベントに立ち会う機会も出てくるかもしれません。経験を積むことにより、最高財務責任者になることも決して夢ではありません。

極めて難易度の高い資格であるため、取得には3,500時間程度の勉強が必要と言われています。一発合格者の1日あたりの勉強時間は入門・基礎期で6.1時間、上級期で8.7時間です。2021年2月の合格率は10.1%でした。

【税理士】

税務のスペシャリストになるための国家資格です。事業会社では、経営や財務、決算書の作成だけでなく、経営戦略や経営方針の策定まで幅広く活躍することが期待できます。

試験は会計学に属する科目(簿記、財務諸表論)の2科目と、税法に属する科目(所得税法、法人税法、相続税法、消費税法又は酒税法、国税徴収法、住民税又は事業税、固定資産税)のうち3科目について行われます。選択する科目によって勉強時間に大きな違いがあります。2020年度の合格率は20.2%でした。

人事

【人事総務検定】

一般社団法人人事総務スキルアップ検定協会が実施する検定試験です。人事・労務管理・年金などに関する知識を取得することを目的としています。社会保険労務士試験の出題範囲が重複する分野が多くあり、社労士試験対策として受験する人もいます。

1級から3級まであり、1級は人事総務の実務に精通しているだけでなく、戦略的な人事制度改革の構築や、トラブルを未然に防ぐ予防法務などの知識を備えることができます。働き方改革を推進する企業で役立つ資格です。

【メンタルヘルス・マネジメント検定】

大坂商工会議所が実施する検定試験です。働く人の心の不調を早期に発見し、活力のある職場づくりを目指すため、メンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を習得します。

Ⅰ種からⅢ種までのコースが用意されています。Ⅲ種は一般社員が対象となっており、自らのストレスの状態を把握することで、助けを求めることを到達目標に置いています。Ⅱ種は管理職が対象です。部下の不調を見抜き、何らかの対応ができることを目指します。Ⅰ種が人事労務管理スタッフ向けです。人事戦略を踏まえた上で、メンタルヘルスケア計画の立案や実施ができるまでを目指します。

【社会保険労務士試験】

全国社会保険労務士会連合会が実施する国家資格です。社会保険労務士は、会社と労働者のために雇用保険や健康保険、厚生年金保険などの書類を作成、手続きを行います。助成金の支給申請なども行うことがあります。労務管理のスペシャリストであり、経営者と労働者との労務問題を解決します。双方の中間に立つポジションであり、重要度の高い仕事です。トラブルを未然に防ぐため、就業規則や労働契約書を作成し、全社員に周知徹底するといった仕事になります。

受験資格がある試験です。資格取得を考えたら受験資格があるのか、事前に調べましょう。合格に必要な勉強時間は1,000時間とされており、2020年度の合格率は6.4%でした。

法務

【ビジネス実務法務検定】

東京商工会議所が実施している検定試験です。企業活動に必要なあらゆる法律知識が習得できます。取引先との契約書を作成する際、契約内容に不備や不利益がないか発見するなど、リスク回避に役立ちます。

1級から3級に分かれています。3級は法律実務の基礎知識、2級は外部の専門家への法律相談ができるレベルを目指します。1級は法律の知識に基づいて多面的な観点から高度な判断・対応ができることを想定しています。

3級を飛ばして2級を受験できるため、まずは2級を目指してみるのがいいかもしれません。2020年12月の実績で、3級の合格率が75.7%、2級が43.4%、1級が12.4%でした。

【行政書士】

許認可などの申請書類の作成や提出手続き、契約書の作成などを行うことができる国家資格です。事業会社の場合は、著作権登録などの知的財産権の保護の分野で強みが発揮できます。そのほか、外国人を雇用する場合に必要となる入国管理局への申請手続きなども行えます。

合格するのに必要な勉強時間の目安は600時間程度です。2020年度の合格率は10.7%でした。

【司法書士】

不動産や法人の登記から裁判所・法務局などに提出する書類作成の権限を持つ国家資格です。簡易裁判所での民事訴訟、調停にて当事者を代理することができます。法務部で働く場合は、登記よりも会社法に関する知識を重視する傾向があります。特に中小企業の場合、弁護士と顧問契約を結ぶまでには至っておらず、契約書などが不十分な場合があります。司法書士は予防法務の分野で力を発揮できます。

合格までには3,000時間程度の勉強が必要です。2020年度の合格率は4.1%でした。

【弁護士】

国内最高峰の国家資格の一つです。法務に関する業務全般を行う権限が与えられます。司法試験の受験資格は法科大学院課程を修了するか、司法試験予備試験に合格することで得られます。司法試験合格後に司法研修所で1年の司法修習を修了することにより、晴れて弁護士となれます。

法律事務所で働くイメージの強い弁護士ですが、企業内弁護士として活躍するケースが増加しています。2020年は2,629人が企業内弁護士となり、過去最高でした。全体の6.2%が企業内弁護士です。

企業内弁護士は企業が抱える問題や課題に対して、事実関係を整理して解決策を提示する仕事です。専門的であるとともに幅広い知識が求められます。プレゼンテーションやコミュニケーション力も重要となります。海外に子会社を設立する際に、不動産の契約書の作成や現地との交渉担当を任されることもあります。

司法試験の合格には最大10,000時間程度が必要といわれています。1日9時間、3年間一度も休まずに勉強する計算です。2020年度の合格率は39.2%でした。

まとめ

資格の取得は、自分が描くキャリアに沿ったものであるかどうかが重要です。何のために取得するのか、その目的を明確にして試験に挑むようにしましょう。中途半端に手を出すと、時間と費用を無駄にするだけです。最近の企業は成果主義、即戦力、経験重視傾向が強くなっています。仕事で成果を出すためにこの資格が必要だと、逆算して考えることが重要です。