先日、アメリカのグーグル(Google)が、日本国内のスタートアップ「株式会社pring(プリン)」を買収することが発表されました。pringは2017年に設立された新興企業で、主に個人間の送金アプリをメインに事業を行っています。

今回の買収の背景には、グーグルが個人を対象にしたスマホ決済事業を強化する狙いがあると見られます。巨人グーグルの目的は何なのか、資金移動業者というキーワードと共に検証してみましょう。

グーグルの狙いとは?

現在日本では、他の先進国と比較してキャッシュレス化が遅れています。そのため政府は「労働基準法」などの法改正にも前向きな姿勢を見せており、今後は社会全体でキャッシュレス化が進むと考えられます。

一方のグーグルは、世界規模での金融サービス強化を推進中で、もちろんその中には巨大な日本の市場も含まれます。過去にこうしたケースでは、グーグルは資金力にものを言わせて企業買収を繰り返してきました。今回pringを買収した狙いも、日本市場で本格的に決済サービス分野へと参入するためでしょう。

グーグルが運営する「グーグルペイ」

当然ですが、グーグルは自前で「グーグルペイ(Google Pay)」というモバイル型決済サービスを展開しています。ただし日本での利用は、「おサイフケータイ」対応のAndroidスマートフォンだけに限られます。

またグーグルペイを利用するにあたっては、基本的に各社のクレジットカードや電子マネー・システムとの連携が不可欠で、グーグルペイは一種の決済代行システムと言えるかもしれません。つまり完全に独立した決済システムではないということです。

送金アプリ「pring(プリン)」

2017年から国内で運営を開始した「pring(プリン)」は、主に個人間での送金サービスに対応したアプリです。プリンを使えば、スマートフォンだけで相手にお金を送ることも、反対に相手からお金を受け取ることもできます。またお店でもキャッシュレスで支払いが可能です。

さらに、グーグルペイとは異なり、プリンではクレジットカードなどとの連携が必要ないため、アプリに登録した金融機関の口座を通して、直接送金や支払いから決済までを完了することができます。キャッシュレス化では、プリンが1歩先を進んでいると言えるでしょう。

日本で進むキャッシュレス化の展望

2016年に調査された、先進各国のキャッシュレス割合を大まかにまとめたのが以下のデータです。

韓国(96.4%)イギリス(68.7%)アメリカ(46.0%)フランス(40.0%)インド(35.1%)日本(19.8%)

韓国は国家全体でキャッシュレス化を推進しているため、他国に比べて数字が突出していますが、2割に満たないという日本の現状は、先進国の中では大幅に出遅れていると言えます。

この現状に憂慮したのか、今、日本政府は「ペイロールカード(Payroll Card)」の導入に向けた準備を進めています。ペイロールカードは完全なキャッシュレス決済に対応していて、しかも勤務先からの給与を直接カードに入金することも可能です。

もう1つこのペイロールカードには革新的な特徴があります。それは、金融機関の口座と連携させる必要がないことです。当然クレジットカードの登録なども必要ありません。直接給与が振り込まれ、それをキャッシュレスで各種決済や送金に使えるわけです。

今後グーグルがとる戦略は?

日本のこうした状況を、グーグルが見逃すはずがありません。2000年以降にグーグルは、200社を超える企業を買収してきたと言われています。これはアマゾンやアップルを大幅にしのぐ数です。おそらく今回のpring買収も、日本市場で個人間送金サービスを拡大するための足掛かりとなるのでしょう。

ここで1つ注目しておきたいのが、ペイロールカードのサービスを実際に運営・管理する組織は、金融庁により認定された資金移動業者になりそうだということです。そしてプリンを運営する株式会社pringは、関東財務局に認定された資金移動業者なのです。

pringは設立からわずか4年という若い企業ですが、グーグルは独自のノウハウでポテンシャルの高い企業を見抜き、買収という手法で新しい技術を吸収してきました。グーグルの視点からすると、プリンというアプリの向こう側に、日本市場をターゲットにした戦略が広がっているのでしょう。

まとめ

200億円規模と推測される今回の買収は、特に目を引くほど大きなM&Aではありません。しかし買収した側がグーグルであり、買収の対象がスマホ送金アプリを運営する新興企業であることから、各界でニュースとなりさまざまな憶測を呼んでいます。

グーグルにとってpringという新興企業は、今後の世界戦略を練る上で極めて魅力的な対象だったのかもしれません。これを第1歩にして、グーグルが日本国内での金融システム構築に動き出すことは間違いないでしょう。ただし、今後GAFAを取り巻く状況がどのように展開するのかは分かりません。いずれにせよ、それによって巨人グーグルの真価が問われることになるはずです。