いわゆるワクチンパスポートと呼ばれる「海外渡航者向けワクチン接種証明書」の申請が始まっています。

自治体や政府運営のオンラインサービス「マイナポータル」で電子申請も可能ですが、対応する市区町村数は全体の1%にとどまることが判明しました。

また、デジタル庁は、スマートフォンでの電子申請および発行システムを年内にも完成させ、国内でも活用したい考えを発表しました。

今回は、ワクチン接種証明書の概要と現状、今後の課題について解説します。

ワクチン接種証明書とは?

ワクチン証明書の概要は以下のとおりです。

活用場面
ワクチン接種証明書とは、日本から海外渡航して入国する際に活用される公的な証明書です。
相手国は、入国者に対する新型コロナ感染症の防疫措置の免除または緩和するための判断材料とします。必ずしもワクチン接種証明書がなければ海外渡航できないというわけではなく、渡航先の入国要件次第です。
現在のところ、国内の飲食店や宿泊施設などでの特典を受けるために発行するものではありません。 どこの国で活用できるのか
海外渡航用のワクチン接種証明書を活用できる国や地域は、外務省のHPで公開しており、随時更新されています。
2021年9月24日現在、米国(グアムのみ)・イタリア・ドイツ・フランス・カナダ・シンガポール・香港など37の国や地域で活用できます。
入国要件や緩和措置内容は国・地域で異なり、ワクチン接種証明書に加えてPCR検査または抗原検査の陰性証明書が必要など、多様な要件があるので確認してください。 対象者
対象は1回以上ワクチンを接種した人で、接種証明書を利用できる国・地域に渡航予定がある人に限定されます。ただし、日本で承認されているワクチンは2回接種が必要なため、渡航先で有効な接種証明書と認められない可能性があります。 申請先
申請先は、基本的にワクチン接種券を発行した市区町村で、窓口もしくは郵送により申請します。申請書・有効なパスポート・予診のみ部分・接種済証などの書類が必要で、証明書は書面で交付されます。
2回目の接種を1回目と異なる自治体で行った場合は、それぞれの市区町村に申請する必要があります。ほかにも、住民票がある自治体HPや「マイナポータル」HPからの電子申請も可能ですが、対応していない自治体がほとんどです。

ワクチン接種証明書のデジタル化の現状

ワクチン接種証明書のデジタル化の現状を見てみましょう。

申請・発行手続きの過渡期にある

現状、電子申請に着手していない自治体が多いことから、自治体によるデジタル化の充実を図ると思われましたが、デジタル庁は9月17日、年内を目途にスマートフォンアプリを活用した申請・交付を可能にすると発表しました。

その内容は、接種者がスマートフォンアプリでQRコードを表示し、事業者が読み取るというもので、取得にはマイナンバーカードが必要です。

ワクチン接種証明書のデジタル化により、海外渡航予定者のみならず、国内での飲食店や宿泊施設などでの活用を見込んでいます。

市区町村の戸惑いも見え隠れ

来年にも海外渡航の予定があるビジネスパーソンにとって、スマートフォンによるデジタルワクチン接種証明書の発行が待ち遠しいところですが、現在申請窓口である市区町村にとっては戸惑いもあるようです。

すでにデジタル庁によるアプリ導入が見えているなか、残り数カ月のために業務が煩雑になる電子申請に今からわざわざ着手したくないと、ほとんどの自治体は活用を見合わせています。

実際、デジタル庁が調べたところ、9月26日時点でワクチン接種証明書を電子申請できるようにした市区町村数は、20にとどまることがわかりました。全国の市区町村数は1,724ですから、全体のわずか1%です。

デジタル庁が広く意見を募集

現在、内閣府とデジタル庁はワクチン接種証明書のデジタル申請・交付について検討中で、自治体や医療機関、事業者などからも仕様に関する意見を募集しています。

期間は2021年9月17日から9月30日までで、匿名によって意見を伝えられます。

結果の概要は、10月中にデジタル庁のHPで公開される予定です。

ワクチン接種証明書のデジタル化に残される課題

ワクチン接種証明書は海外への入国にあたり、新型コロナ感染症の防疫措置の免除または緩和材料として有益ですが、今後の国内での活用には課題もあります。

マイナンバーカードの普及率が低いことをはじめ、ワクチンを打ちたくない・打てない人への差別や生活面での不便につながる可能性や、同調圧力によるワクチン接種を余儀なくされる人もいます。

また、スマートフォンを持たない人や個人情報の流出を危惧する人もおり、デジタル化に取り残される人や不安を抱く人たちへの公平性ある対応が必要です。

さらに、ワクチン接種を2回した人が新型コロナウイルスに感染するケースも見られることから、証明書の意義を明確にしてほしいという声も無視できないでしょう。

まとめ

現在は海外渡航予定者に向けたワクチン接種証明書ですが、今後は国内での活用も見込まれています。新政権には、便利さの裏側にある課題にもしっかりと向き合い、証明書をいかに活用すべきかを検討したうえで、ワクチン接種証明書のデジタル化を進めてほしいものです。