日本企業のDX化は欧米諸国に比べて遅れているとされており、その要因の一つにDX人材の不足もあげられています。しかし、「DXの本質はManagement Transformation(MX)」という指摘もあります。そのMXとは?

MXのリード役となるのは経営企画・経理財務担当者

経産省の「DX推進ガイドライン」によると、DXとは「データとデジタル技術を活用し、製品やサービス、ビジネスモデルの変革、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革して競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

このDXの定義では、ビジネス環境の激しい変化に対応していくためには、“早急にデジタル化を推進しなければ生き残ることさえ難しい”と読み取ることもできます。やはりDX化には、デジタルに詳しい人材が必要と考えるのが一般的でしょう。

しかし、JBpress主催の「ファイナンス・イノベーション2021」(2021年2月25日に開催)の特別講演で、東京都立大学大学院経営研究科の橋本勝則特任教授(デュポン株式会社 前取締役副社長)は、「日本企業が生き残るためのDXの本質は、Management Transformation(MX)」で、そのリード役となるのが経営企画・経理財務担当者と述べています。

経営とITの仲を取り持つ役割

橋本氏は、経営企画・経理財務担当者の“活躍のチャンス”だとも述べています。その理由は、デジタルトランスフォーメーションを、デジタル変革の河を渡り対岸を目指すプロセスにたとえて、向こう岸に渡るための「船頭役」を経理財務担当者が担うべきだからだと考えているからのようです。

船頭役には船が必要で、船にあたるのが定型業務から価値創造ワークにシフトできるデジタル環境です。デジタル化によってこれまでの会計的な仕事から、キャッシュフローや各種戦略をベースにした仕事へとシフトすることが必要で、その中で会社全体のレベルアップを図ることが、「船頭役」である経理財務担当者の役割ということです。

つまり、経営とITの仲を取り持つ役割を担えるのが経営企画・経理財務担当者であり、DXの本質もMX(Management Transformation)にある、という考え方です。

DXに対する傍観者的な立ち位置からの脱却が必要なバックオフィス

これまで会社で取り組むDX推進には、経理財務担当者はどちらかといえば傍観者的な立ち位置だったのではないでしょうか。担当業務にデジタルツールを導入することを、DXと認識していたかもしれません。

DXに関わるバックオフィスは経理財務だけではありません。リモート勤務やオフィスとのハイブリッド環境の整備、さらに業務分担や仕事のやり方を見直すことや、DX・MXに対応した人事制度の設計など、総務や人事の管理部門の役割も必要です。また、DX推進を成功させるためには、スピードや柔軟性だけでなく、リスクコントロールも重要となります。DXに伴うリスクへの対応も法務部門の担当です。

そして、経理財務部門としては今後の計画や戦略に合わせたキャッシュフローなどの管理もさらに重要となります。バックオフィスは関係ないどころか、大きな役割を担う必要がありそうです。もう、傍観者ではいられませんね。

DX推進は全社一丸となって取り組むことが必要

DXは、全社一丸となって取り組む必要があり、製造、技術、営業、マーケティング、経理、財務、人事、総務、法務などの全部署からの選抜メンバーによるチーム編成も視野に入れるべきではないでしょうか。

既存のITシステムは老朽化し、企業の成長を阻む「2025年の崖」も、間近に迫っています。それを回避するために、多くの企業がDXへの取り組みを始めていますが、その成果を実感することができない企業も多いようです。

成果を実感するためにも、「DXの本質はManagement Transformation(MX)」という考え方で、自社のDX推進を見直してみてはいかがでしょうか。

まとめ

産業界は、IT技術の進化によって、まさに変革期に差しかかかっています。この変革の波をピンチととらえるか、それとも飛躍のチャンスととらえるかは、それぞれの受け止め方次第かもしれません。