飲食店などに要請されていた時短営業や酒類提供などの制限が解除され、繁華街には久々にネオンが灯り、飲食店にとっては待ちに待った通常の営業再開となりました。
しかし、制限解除とともに浮上したのが人材争奪戦という新たな課題です。

飲食店が待ちに待った制限解除

感染拡大の要因の一つとされたのがアルコールを伴う飲食で、感染を予防するために深夜までの営業や酒類提供の制限、さらに換気システムや消毒の徹底などの感染対策が、飲食店には強く求められてきました。

その結果、売り上げの大幅ダウンは避けられず、多くのファンに愛されてきた有名な老舗店でさえ営業を継続していくことが難しくなり、暖簾を下してしまったところもありました。

その飲食店の経営を苦境に陥れていた制限がやっと解除され、感染爆発となった東京ではおよそ11か月ぶりに制限なしの営業となりました。飲食店経営者にとっては、まさに待ちに待った制限解除となったことは言うまでもありません。

人材確保という新たな課題が浮上

しかし、飲食店には営業再開による大きな期待とともに、人材確保という新たな課題も浮上しています。

飲食店を支えてきたのはアルバイトやパートなどの非正規雇用者です。休業や時短営業の要請に従ってきた飲食店は、従業員数を減らすだけでなく、雇用契約そのものの解除などで要請に対応せざるを得ませんでした。

そして、営業再開となればそれなりの従業員数を確保しなければなりませんが、辞めさせた従業員がすぐに戻ってくれるかといえば、そう簡単なことではありません。

ただでさえ深刻な人手不足状態に陥っていた飲食業界ですから、制限解除とともに始まったのが激しい人材獲得競争です。しかも、求めているのは離れてしまった客を再び戻すためにも、単なるアルバイトではなく将来の社員候補となるような有能なスタッフです。

激しい人材獲得競争が勃発

クックビズによると、企業の人材確保の相談数は、9月の緊急事態宣言解除の前後と比較すると「およそ1.5倍に増加している」そうです。しかも、企業の採用に対する考え方が“厳選採用”を重視する姿勢に変わりつつあるようです。

ところがその企業が求める人材は求人マーケットでは2割程度とされていて、この2割の人材を取り合う状態になっているそうですから、飲食店に限らず、まさに激しい人材獲得競争、人材争奪戦となっているわけです。

仕事に慣れている、ある程度店の切り盛りを任せられる有能なスタッフが戻ってきてくれるのならなんの問題もありませんが、新たに教育するとなればそれなりの時間も必要です。

しかし、そんな準備もできないままいきなり制限解除ですから、飲食店にとっては“痛し痒し”というところではないでしょうか。

取り組むべきはコロナ後を見据えた労働環境の改善

飲食サービス業界での人手不足は、今に始まったことではありません。残業が多いことや労働時間が不規則なことなどの過酷な労働環境、さらに非正規雇用の従業員が多いためにすぐに辞めてしまうことなどが、その背景にあるようです。

慢性的な人手不足状態にあるファストフード店やファミリーレストラン、居酒屋チェーンなどは、少人数での強引なシフト編成によって人手不足を補ってきましたが、それが従業員の大きな負担となっていたことも人手不足の要因の一つです。

しかし他の業界をみると、働き方改革によって労働時間の短縮や休日の増加など、労働環境が大幅に改善している業界もあります。飲食サービス業の労働環境が改善され、魅力的な職場ということをアピールすれば、人手不足の解消にもつながるでしょうが、そのためには時間も必要です。

残念ながら制限解除による人材争奪戦には間に合いそうもありませんが、コロナ後を見据えた労働環境の改善や待遇改善に取り組むことが、慢性的な人手不足状態から抜け出すためには必要となりそうです。

まとめ

飲食サービス業界の労働環境改善は急務ですが、労働時間や労働日数を自由に選べること、つまり多様な働き方を率先して提示してきたのも飲食サービス業界です。ただ、それは人手不足へ対応するためであり、本来の働き方改革の理念とは異なるものでした。多様な働き方が選択できるという、本来の理念に近づくことができるかどうか、それによって飲食サービス業界のイメージが劇的に変貌する可能性も秘めているのではないでしょうか。