「SDGs(Sustainable Development Goals)」とは、2015年に国連サミットで加盟国の全会一致で採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。日本では「持続可能な開発目標」と呼ばれています。

SDGsは地球規模でのテーマであると同時に、各国の経済活動を支える企業にとっても優先すべき課題です。ところが、企業が遵守すべき社会的責任とSDGsの取り組みとの間には、大きなギャップが生じる可能性があるのです。その要因となる独占禁止法、コンプライアンスとSDGsとの関わりについて検証します。

企業が目指すべきSDGsのゴール

国連が提案するSDGsには、2030年までに達成すべき17のゴールが明記されています。まずはその中から、企業活動にとっても直接的に重要なテーマになりそうな主な項目を抜き出してみましょう。

・ジェンダー平等

・世界中にクリーンなエネルギーを

・働きがいと経済成長

・産業と技術革新の基盤づくり

・作る責任と使う責任

・気候変動対策

・パートナーシップで目標達成

これらの目標に対して、各国の企業は何らかの形で関わることになります。それとは別に、企業は社会の中でコンプライアンスとして、社会的責任の遵守を義務付けられています。このコンプライアンスとSDGsとの関りを、さらに掘り下げることにしましょう。

現代企業に必須の「コンプライアンス」

企業の経営目標は、第一に利益を上げてそれを社員全員に還元することですが、近年はもう1つの重要な概念として、コンプライアンスを強化することも、企業にとって不可欠な取り組みになっています。

コンプライアンスとは簡単にいうと、企業が社会に対して果たすべき責任を明確にすること、および法律や慣習によって禁じられている行為を犯さずに、健全な企業運営を目指すことです。

コンプライアンスは社会的に広く認知されているため、これに違反する企業は社会的信頼を失い、場合によっては法的に裁かれることにもなり、経営にも大きなダメージを受けることは間違いありません。現代企業にとっては、経営戦略の1つにもなり得るのです。

SDGsと独占禁止法との軋轢

SDGsは社会全体が包括的に進めるべき目標であり、コンプライアンスの考え方に通じる部分もあります。しかし世界のほとんどの国には、企業どうしの公平な競争を保証する法律があり、日本ではそれが独占禁止法にあたります。

●独占禁止法とは?

独占禁止法は「私的独占の禁止及び公正取引委員会の確保に関する法律」の略称で、公正取引委員会がその運用にあたっています。名称にもある通り、特定の企業に権益が集中して、市場が独占もしくは寡占状態に陥ることを防ぐ役目を果たしています。

独占状態になると公正な企業間競争が妨げられるのみならず、消費者をはじめとする社会全体が不利益を被ります。そこで私的独占、カルテル、談合、その他不公正な取引を禁止するとともに、さまざまな規制により独占を排除して、企業間の競争促進と消費者の利益向上を図っているのです。

●どちらを優先すべきなのか?

国内では日本経済団体連合会(経団連)も、積極的にSDGsを推進する姿勢をとっています。ところが環境対策や、クリーンエネルギーの利用促進などの目的で、複数の企業が一定の取り決めを結ぶようになると、それがカルテル規制の対象になるという議論が起きています。

こうした議論はヨーロッパが中心ですが、日本でもSDGsと独占禁止法との間で、解釈のズレによる軋轢が生じる可能性があります。例えば環境対策を優先するため、同業の複数企業が取り決めを結んだりすると、これがカルテルにあたり消費者の利益を損なうかもしれません。

それを防ぐためにSDGsを優先させると、独占禁止法の適用の例外になり、カルテルを容認する結果になる可能性もあります。SDGsと独占禁止法とのバランスは、非常に難しい問題だと言えるでしょう。

SDGsと独占禁止法との共生

SDGsは国という垣根を越えた取り組みであり、今後もまず優先するべきは社会全体の、さらには地球全体の利益であることは言うまでもないでしょう。その上で日本の独占禁止法のような、企業間の公正な競争を促す法律との間で、新たな解釈や調整が必要になるはずです。

いずれにせよ各国企業も、今後はSDGsの取り組みを前面に打ち出すことになると考えられます。日本国内でも早い段階で、SDGsと独占禁止法との共生を探る必要があるでしょう。

まとめ

企業が支える経済活動は、ある意味では非常に厳しい競争社会です。一方のSDGsが目標にするのは、人類全体が公平に公正に暮らし続けられる社会です。どちらかを優先しようとすると、お互いに越えられない壁にぶつかる危険性があります。

解決策を見つけることは簡単ではないですが、これからは少しずつお互いの社会が歩み寄って、最善の方法を模索することが求められるでしょう。まだ議論は始まったばかりですが、2030年はもうそれほど遠くないところまで来ています。