年々お正月の風情が失われていくと嘆く大人もいますが、子どもたちにとっては初詣や元旦のごちそう、お年玉などは今も変わらないお正月の楽しみでしょう。
ところがこのお年玉、場合によっては贈与税の対象となってしまう可能性があるのです。今回はお年玉に対する国税庁の考え方や贈与税の対象となるケースについて解説していきます。

お年玉は現金を贈与する行為

お年玉は、新年を迎えた家族(もしくは親族や知人)の中で長年行われてきた日本古来の慣習です。一見税の世界とは無縁にも思えます。しかし、お年玉を渡すという行為は、税制からみれば「現金を贈与する行為」に他なりません。

国税庁は、贈与税を「原則として贈与を受けたすべての財産に対してかかるもの」と定義しています。ただしこれでは、毎月子どもに渡すお小遣いでさえも課税の対象になってしまうのです。そこで国税庁では、その財産の性質や贈与の目的などからみて、次章に挙げるような財産については贈与税をかけないとしています。

贈与税がかからない財産とは?

国税庁のホームページ「No.4405 贈与税がかからない場合」に掲載されている、贈与税がかからない財産とは主に以下のようなものです(抜粋)。

●法人からの贈与により取得した財産

贈与税は、個人から財産を贈与により取得した場合にかかる税金です。法人(企業など)から財産を贈与によって取得した場合には「所得税」がかかります。

●夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの

子どもへのお小遣いや衣服、学費、塾の費用、文房具など、扶養義務者から被扶養者に贈与される財産はこれにあたります。

●宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う一定の者が取得した財産で、その公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

慈善や学術の発展を目的とした寄付、宗教法人などへの信仰心に基づいた寄付などはこれにあたります。初詣などで奉納するお賽銭なども非課税です。

●個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの

お葬式の香典や結婚式のご祝儀などはこれにあたり、贈与税の対象とはなりません。またここに記載されている「年末年始の贈答」にはお歳暮なども含まれます。お年玉もこの条項に該当し贈与税はかからないと定義されています。

それではなぜ、お年玉が場合によっては贈与税の対象となってしまう可能性があるのでしょうか?
それは、この文中にある「社会通念上相当と認められるもの」に関係してくるのです。

「社会通念上相当と認められる金額」とは?

明確な金額が示されておらず「社会通念上相当と認められる」とは、とても曖昧な定義です。これでは人によって捉え方が変わり、判断に迷う場合も出てくるでしょう。ただし贈与税は個々の贈与に対してのみかかるものではなく、年間の合計額に対してかかるものです。

110万円が課税の分かれ目

贈与税は、1人の人が1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与された財産に対してかかります。年間の贈与額の合計から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの金額に対して課税されるのです。つまり1年間に贈与された財産の合計が110万円以下であれば、贈与税は発生しません。

ここで整理しなければいけないのが、お年玉の定義です。国税庁のホームページではお年玉は(社会通念上相当と認められる金額までは)課税されないとありますが、これを財産の贈与と考えれば110万円を超えた場合には課税される、となるのです。

贈与税の対象となるのは現金だけではない

私たちが通常考える「お年玉」の概念では、年間であっても110万円を超えることはなかなか考えられません。ただし受け取る側が成人した場合や、大学への入学、就職のお祝いなどとなると、それを「お年玉」と定義した場合でも課税対象となってしまうことがあります。

また贈与税の対象は現金だけではありません。プレゼントを贈った場合などでも金額によっては課税の対象となります。たとえば以下のような場合には、年間の合計額に気をつける必要があります。贈与税は贈った人ではなく、受贈者(贈与された側)に課税されるのです。

●高級万年筆

筆記具として普段から使っている人は少なくなりました。しかし、昔は入学祝いの定番でした。海外製の万年筆ともなれば、10万円を超える物もあります。

●高級時計

大学を卒業し、社会人になったときに就職祝いとして時計を贈ることもあるようです。時計も海外製となれば、100万円を超える物も珍しくありません。

●自動車

日本では、18歳になれば運転免許を取得できます。高校を卒業し、大学入学時に通学用として車をもらうことも、地方では十分考えられることです。自動車の場合は、高級車でなくとも100万円超える価格は決して高いものではありません。諸費用などを含めれば、簡単に110万円を超えてしまう贈りものです。

このように、たとえ年始のお年玉(現金)が110万円に届かなくても、プレゼントなどをもらえば年間の贈与額が課税対象となってしまうことは十分に考えられるのです。

まとめ

常識的に考えて、小学生や中学生のお年玉に贈与税がかかることは考えにくいでしょう。しかし、人生の節目のお祝いとなると、お年玉も高額になることが考えられます。たとえ近しい親族に渡すものであっても、その内容と金額によっては注意が必要になるのです。どのような場合でも、納付する義務の発生した税金を納めなければ、それは脱税行為になります。物であれ現金であれ、少しでも贈与に際して疑問を感じたら税理士さんなどに相談をしておきましょう。

※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁や専門家にご確認ください