1976年(昭和51年)に施行された特定商取引法は、その後時代に合わせた改正を重ね、今回2022年(令和4年)6月1日に再び改正法が施行されることになりました。

多様化する近年の商取引に対応して、消費者を守り取引の公正を図るための改正です。この記事ではその主な改正ポイントと、特定商取引法の基礎的な内容について解説します。

特定商取引法の基礎知識

特定商取引法(特商法)には2つの大きな目的があります。1つは商取引において、事業者が守るべき公正なルールを規定することです。そしてもう1つは、商取引上で生じるさまざまなトラブルから消費者を保護することです。

ただしすべての取引に対して適用される法律ではなく、対象になる商取引は7つの分類に限られています。その分類をわかりやすく以下に紹介します。

①訪問販売

事業者が消費者宅を訪問して、商品やサービスを提供する契約を結ぶ行為で、キャッチセールスなどとも呼ばれます。

②通信販売

現在広く行われている、インターネットや新聞・雑誌の広告による取引行為のことです。

③電話勧誘販売

事業者側から電話によって勧誘を行い、その場もしくは後日契約を取り交わす行為です。

④連鎖販売取引

ある個人が次の個人を勧誘して、連鎖的にピラミッド構造の販売ネットワークを構築する取引のことです。いわゆる「ねずみ講」として大きなトラブルに発展することがあります。

⑤特定継続的役務提供

エステサロンや語学教室のように、長期間継続するサービスを提供する代わりに、高額の対価を求める行為です。

⑥業務提供誘引販売取引

事業者側が仕事の提供を約束する条件で、その仕事に必要な商品などの購入を求める行為です。

⑦訪問購入

貴金属や宝飾品のように、事業者が消費者宅を訪問して物品を買い取る行為です。

こうした商取引には、クーリングオフのように広く知られる消費者保護対策が適用されますが、実際にトラブルが生じると、消費者だけでは問題解決が難しくなります。そこでトラブルを未然に防ぐために設けられている法律が、特定商取引法なのです。

特定商取引法改正のポイント

今回の改正では四つの点で対策が強化されます。条文を要約して、すでに施工された改正点、今後施工予定の改正点も加え、そのポイントを紹介しましょう。

●すでに施行された改正点

2021年7月には、今回の改正に先行する形で「送り付け商法対策」が強化されました。送り付け商法とは、事業者側が一方的に商品を送り付け、売買契約を成立させようとする不正な商取引です。今回の改正では、一方的に送られてきた商品は、消費者の判断ですぐに処分できるようになりました。

●2022年6月1日施行の改正点

2022年6月に施行される改正点は四つです。順番に解説しましょう。

①クーリングオフ通知の電子化

消費者側が一定期間内に契約を解除する制度としては、クーリングオフが一般的に知られています。しかし現在までこの制度は、消費者からの書面による撤回の申し込みが必要でした。それが今回の改正により、電子メールのように電磁的な方法でも申し込めるようになります。

②通信販売の規制強化

この規制が対象にしているのは、定期的・継続的な購入契約であるにもかかわらず、その事実を秘匿して契約を迫るような不正商取引です。初回無料のようなサービスを強調し、そのまま自動で定期契約に移行するような販売方法がこの規制対象になります。

具体的には広告の表示規定を強化することや、誤って申し込んでしまった消費者が、契約の取消権を行使できることなどが盛り込まれます。

③行政処分の強化

不正行為をした事業者に対して、業務停止命令や業務禁止命令など、実効的な行政処分の強化が図られます。

④海外執行当局への情報提供

国際的な商取引の拡大に対応するため、海外の執行当局との情報交換を重視し、国内から海外への情報提供がスムーズにできるようになります。

●今後施行予定の改正点

事業者が契約時に交付する書面について、電子メールのような電磁的方法による送付が可能になります。現状では書面による交付が義務付けられています。ただし消費者による事前承認の必要性や、クーリングオフとの整合性などの観点から、2023年にまで議論が持ち越される予定です。

まとめ

ほとんどの法律は時代のニーズに合わせて、繰り返し改正し施行が行われます。とくに現在は社会全般で電子的な手続きが広がっており、さまざまな法律に対して、電子化に対応するための改正作業が行われています。

商取引の分野では、近年インターネットによる売買が急激に伸びていて、新たに登場する取引形態に法律が追いついていない状態でした。法律が正常に機能しないと、トラブルから消費者を守ることが難しくなります。

今回の特定商取引法(特商法)改正も、インターネット上で生じるトラブルを視野に入れたものです。ただし法律として、まだ実状に合わない部分が残されているかもしれません。加速するインターネット社会の変化に対応するためには、新たな改正の議論が必要になるのではないでしょうか。