インターネット上での誹謗中傷への対策として、「侮辱罪」の厳罰化と新たに「拘禁刑」創設する改正刑法が可決・成立しました。これでネット上の誹謗中傷に歯止めがかかることになるのでしょうか。

「刑罰が軽すぎる」と厳罰化を巡る議論が活発化

インターネットの普及によって、誰もが自由に自分の意見を発信できるようになりました。しかし、その一方で、何の根拠もないデマや、心無い誹謗中傷の書き込みもネット上には溢れています。

しかし、ネット上で誹謗されていることを、名誉毀損罪や侮辱罪で告発しようとしても、事件として立件するためのハードルが高く、たとえ侮辱罪で立件できたとしても、現行法では30日未満の拘留、また1万円未満の科料という軽いものです。

これでは、被害者は泣き寝入りをするしかありません。しかし、心無い誹謗中傷によって傷つく人も多く、プロレスラー・木村花さんが自殺にまで追い込まれたことをきっかけに、「刑罰が軽すぎる」という声が高まり、厳罰化を巡る議論が進められてきました。

「侮辱罪」の厳罰化と「拘禁刑」の創設

今回の改正では、拘留または科料だけだった侮辱罪の法定刑に「1年以下の懲役もしくは禁錮」「30万円以下の罰金」が追加され、新たに「拘禁刑」が創設されています。

拘禁刑は、刑務所などに収容する刑罰のうち刑務作業の義務がある「懲役刑」と義務がない「禁錮刑」を一本化したもので、刑務作業に加え、再犯防止のための教育などを受けることもできるようになります。

刑の種類が変更されるのは、115年前に刑法が制定されて以降、はじめてのことです。また、侮辱罪の公訴時効(名誉毀損罪は3年)も1年から3年になり、侮辱罪に該当する投稿者を特定するための捜査にかける期間も、これまでよりは長くなります。

この厳罰化によって、ネット上で溢れている誹謗中傷に歯止めがかかることが期待されています。しかし、一方では言論抑制や表現の自由が制限されるのではないかといった懸念を指摘する声もあります。

匿名での投稿がもたらす弊害

ネット上に誹謗中傷の投稿が溢れているのは、匿名で投稿ができるからです。自分が思うままの意見や主張を無責任に発信しても、投稿した個人が特定されなければ、投稿者が非難されることも、罰則を受けることもありません。

そのため、何の根拠もないデマが拡散することもありますし、傷つく人も出てきます。たとえば、東京・池袋の暴走事故で妻子を亡くした松永拓也さんに対して、SNSには「金や反響目当て」などと、中傷するコメントが溢れていました。

このケースは、書き込んだ22歳の男が特定され、今年4月に書類送検されました。こうした出来事は全国各地で発生しています。

厳罰化が「言論封じ」に悪用されるという懸念も

投稿者を特定することが難しいのは、ネット交流サービス事業者などの、情報開示に消極的な姿勢があるからです。しかし、匿名で投稿できるからこそ、多くの人がネット交流サービスを利用しているという背景があります。

また、この厳罰化が「言論封じ」に悪用されるという懸念を示す声もあります。もし、中国やロシアのように自由に意見や主張ができなくなれば、ネット交流サービスも衰退することになるのではないでしょうか。

まとめ

要するに、ネット上に投稿をする1人ひとりのモラルにかかっているといえそうです。侮辱罪の厳罰化を機に、利用者もネット交流サービス提供事業者も、表現の自由も含めたネット上の書き込みについて、あらためて考える必要がありそうです。

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