2022年度の最低賃金の引き上げ額について、労使の代表者が中央最低賃金審議会(厚生労働省の諮問機関)で協議し、引き上げ額の目安額が過去最大の31円で8月1日に決着しました。

31円アップで最低賃金の全国平均は961円

最低賃金とは、労働者が生活をしていくために最低限必要な費用と、企業が賃金として支払える能力を基に、中央最低賃金審議会で労使の代表者と有識者委員が協議して目安を決め、その目安をベースに各都道府県が審議会で最低賃金を決定します。

現在の最低賃金の全国平均は930円ですが、中央最低賃金審議会が示した今回の引き上げ額の目安は31円です。この目安通りに、各都道府県で最低賃金を引き上げれば、全国平均の最低賃金は961円となります。

最低賃金はすべての労働者に適用となる、いわば時給の最低ラインです。もし、賃金を支払う企業が、この最低ラインを下回る時給額で賃金を支払えば、罰金が科せられることになります。

上げ幅を巡る労働者側と経営者側の主張に隔たり

それにしても、過去最大の上げ幅とはいえ“31円”という金額に、ビジネスパーソンの皆さんはどのような印象を受けるでしょうか。日本の賃金水準が、20年とも30年ともいわれる長期間にわたって上がっていないことを示す金額といえそうです。

それにしても、労働者側が“最低賃金1,000円”を要求してから、一体、何年経つでしょうか。政府の目標も「   早期に1,000円」ですが、いまだに届いていないのが現実です。

今回の協議では、軒並み値上げラッシュの物価高を背景に、労働者側は大幅な引き上げを主張していました。しかし、経営者側は、高騰を続ける仕入価格の上昇を納入価格へ転嫁することが難しく、収益が圧迫されていることを理由に難色を示し、協議は難航していました。

両者の主張に隔たりがあるため、なかなか合意形成に至らず、協議を一旦中断し、厚労省を含めた水面下での調整によって、ようやく“31円”で決着したようです。

欧米諸国の最低賃金の上げ幅は日本の倍以上

決着はしたものの、三村明夫日本商工会議所会頭は「企業の支払い能力が反映されず厳しい結果だ」とコメントしています。物価高の影響は、労働者だけでなく企業側にも重くのしかかっているようですが、時給1,000円の壁を超えるのはまだまだ先となりそうです。

しかし、このままでは欧米諸国との賃金水準との差は、ますます開いていくことになりそうです。たとえばドイツでは7月に最低賃金を、前年の6.4%増の10.45ユーロ(約1,450円)へ引き上げ、さらに10月には12ユーロ(14.8増)まで引き上げる予定とされています。

アメリカでは、ロサンゼルス市が6.9%増の16ドル(約2,184円)に引き上げを実施しています。日本の上げ幅は、ここ数年3%程度で推移していますから、日本の倍以上の最低賃金が引き上げられています。

正規と非正規の賃金格差解消にもつながる最低賃金の引き上げ

では、なぜ日本では平均賃金も最低賃金も上がらないのでしょうか。平均賃金が上がらない要因の一つとされているのが、正規雇用社員よりも賃金が低く抑えられている非正規雇用者が増加していることです。

正規と非正規の賃金格差解消には、最低賃金の引き上げが欠かせません。しかし、アルバイトやパートなど非正規雇用が多い飲食や宿泊などのサービス業にとっては、コロナ禍で収益が悪化しているだけに、時給アップもそう簡単なことではありません。

サービス業の多くは小規模な中小零細企業ですから、収益に見合わない人件費のアップは経営状態の悪化に直結してしまうことも考えられます。

ともあれ、過去最大の上げ幅となった最低賃金の目安が31円と示されました。この秋にも本格的になるとされている物価高騰に、はたして耐えられる最低賃金額になるのでしょうか。

まとめ

コロナ禍で冷え込んだ消費の回復には、持続的な賃上げが必要です。そのためにも最低賃金の底上げが欠かせませんが、各都道府県別の新たな最低賃金が決まるのは10月ごろです。さて、どうなるのでしょうか。