会社に出勤しなくても仕事ができ、リモートで会議にも参加できるなど、オンライン環境が整備されたことにより、さまざまな働き方が選べるようになりました。その反面、労働時間外や休日に、メールなどへの対応を求められるという負担も増えています。

仕事とプライベートとの線引きをどこにするか、というこの問題について、現在「つながらない権利」という新しい考え方が注目されています。これはいったいどのような権利なのか、日本国内の現状と今後の展望を交えて紹介します。

権利の国フランスで始まった動き

1789年、ヨーロッパ史を書き変えるほどの大事件「フランス革命」が起こりました。この時に国民の権利を明確に規定する、「人権宣言(人間と市民の権利の宣言)」が採択されました。

そのフランスでは2017年に、世界に先がけて「つながらない権利」という新しい権利が法律化されました。この法律により労働者は、業務時間外に会社から仕事上の連絡があっても、それを拒否することが可能になったのです。

日本国内の労働環境は?

日本人は伝統的に、仕事とプライベートをはっきりと区分することが苦手でした。それはリモートワークが普及した現在でも同じことで、業務時間外であっても、緊急性が高い会社からの要請に対しては、ほとんどのビジネスパーソンが対応せざるを得ないでしょう。

またリモートワーク中は常時カメラをオンにしておくことや、定期的に勤務状況を画面のスクリーンショットで送信するなど、半ば会社による監視と思えるようなルールも一部の企業で行われているようです。

つながってしまうことによる問題点

現代のビジネスでは、出社してもリモートワークでも同様にパソコンを使います。さらにスマートフォンでも、ほとんどパソコンと同レベルのやりとりが可能です。これだけの環境が整っていると、例えば取引先から急な用件が舞い込んできたり、クライアントからクレームが入ったりすると、時間にかかわらず担当者は対応を求められます。

これが常態化してしまうと従業員は常に会社につながっている状況になり、精神的な負担とストレスが増大してしまう可能性がでてきます。場合によっては心身に異常をきたすことも考えられ、企業側でも貴重な人材を失うことにつながりかねません。

つながらない権利に関する日本の現状

法律によって、つながらない権利が規定されていない日本では、以下のケースに限り法律による権利を主張し、会社側に改善を要求することができます。

一つは業務時間外もしくは休日の業務対応に対して、会社側が手当を支払わないケースです。これは日本の企業風土では、十分にあり得ることです。

もう一つは、会社から、緊急連絡時に備えて常に連絡をとれるような待機状態を求められるケースです。この場合は待機中も労働時間とみなされるため、それに対する報酬が支払われないと労働基準法に違反することになります。

しかし、社内規定が厳格に施行されている大手企業などを除いては、いわゆるサービス残業扱いで、常に会社とつながった常態にある従業員はかなり多いのが現状ではないでしょうか。

つながらない権利に対する今後の取り組み

厚生労働省などで審議のテーマにはなるものの、つながらない権利の法制化については依然として未知数です。しかし国内でも徐々に、つながらない権利を確保する動きが出てきているようです。

ある大手企業では全従業員に対して、深夜から早朝までの時間帯と休日には、メールなどでのやりとりを控えるというルールを設けています。また業務用アプリケーションの中には、つながらない権利の考え方を取り入れ、退勤後の連絡を遮断する機能を搭載したものも登場しています。

つながらない権利を認めない状況が続くと、従業員の継続的な負担が大きくなり、業務効率の低下を招く恐れがあります。さらに、連絡のやりとりがパワーハラスメントにまで発展すると離職者が増える可能性もあり、いずれにしても会社と従業員の双方にとってはリスクにしかなりません。

日本労働組合総連合会(連合)は2020年9月に、「テレワーク導入に向けた労働組合の取り組み方針」を策定しています。その中では長時間労働対策の一つとして、つながらない権利が明確に規定されています。

今後は日本でも、つながらない権利に関する議論が活発になり、対応する取り組みも徐々に進むと考えられます。そのためには、個人が自身のプライベートを守るという意思を持ち、企業もつながらない権利を守る上での仕組みづくりを始める必要があるでしょう。

まとめ

リモートワークが定着したことで、仕事とプライベートを明確に区別する必要性が生じました。しかし一方では、かなりの人が自分が送ったメールにはなるべく早く返信してほしいと考えている、という調査結果も報告されています。

法律に頼らないとすれば、今後は企業内で積極的に、つながらない権利を守るための仕組みづくりを促進しなければなりません。まずは、担当者が不在でも対応できる組織にすると同時に、研修などを通してつながらない権利を浸透させるなど、できることからすぐに始める必要があるでしょう。

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