日本では伝統的に長時間労働が一般的になっており、サービス残業も黙認されてきました。
しかし政府が働き方改革を推進する中で、サービス残業についても徐々に見直しが進んでいるようです。

本来サービス残業は企業にとって違法行為であり、労使の合意があっても許容できることではありません。
ではどうすればサービス残業を防止できるのか、ここではその実態を踏まえた上で、防止するためのポイントを解説します。

サービス残業の実態

日本労働組合連合会(連合)の「労働時間に関する調査」によれば、正規・非正規労働者を合わせたうちの約4割が、サービス残業をしていると答えています。平均では月に18時間程度で、管理職になると28時間程度と長くなる傾向にあります。

残業の定義とは?

残業とはややあいまいな言葉で、法律で定められる「時間外労働」とは異なります。労働基準法では労働時間の上限を、1日8時間で週に40時間に規定しており、その上限を超えた場合は時間外労働として扱われます。

一方の残業とは現場で用いられる言葉であり、社内で決められた労働時間内では業務を完遂できず、追加の時間で仕事を終わらせる場合の労働を意味します。担当する業務を終わらせるための追加労働と考えればよいでしょう。

サービス残業とは?

サービス残業は「賃金不払残業」とも呼ばれ、業務を完遂するための追加労働に対して事業主側が賃金を支払わない状況のことです。サービス残業は企業モラルの問題ではなく、以下の2点で明らかに労働基準法の違反に該当します。

・労働時間の問題

1日8時間、週に40時間の法定労働時間を超えて勤務させる場合、労使間で36協定を締結して労働基準監督署に届け出る義務があります。それを怠ると違法行為と見なされます。

・賃金の問題

時間外労働でも当然賃金が発生しますが、残業する時間帯によっては割増賃金になる可能性もあります。これらの賃金を支払わないサービス残業は、賃金不払いと見なされるのです。

サービス残業となる具体的な労働状況

労使ともに知らなかったとしても、これから挙げるケースはサービス残業に該当します。知らなかったでは済まされないことなので、しっかりと確認しておきましょう。

①勤務時間の虚偽報告

定刻でタイムカードを打刻し、それから残業を命じられるパターンなど、事業主や管理職の認識不足が原因でサービス残業が発生します。

②残業時間の切り捨て

本来の残業時間を分単位で切り捨てて、実際の労働時間よりも少ない時間を記録することも明らかなサービス残業です。

③始業時間前の労働

決められた始業時間の前に、業務を開始するように命じられた場合もサービス残業と見なされます。

こうした労働環境が現在も残っているのは、日本人の多くが時間外労働に対する意識が低く、賃金を要求することに後ろめたさを感じていることが一つの原因でしょう。当然事業主側の認識不足も関係しているはずです。

しかしサービス残業は、従業員が自発的に行った場合でも、事業主側が罰則の対象になります。労働時間を適切に管理する責任を問われるからです。

サービス残業に対する罰則

サービス残業が認められた場合、事業主には労働基準法に則って「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という刑事罰が科されます。同時に、労働基準監督署による立入調査や、是正勧告などが行われます。

実際にサービス残業を行った従業員は、未払いの残業代を請求することができます。事業主側が認めない場合裁判に発展するケースもあり、サービス残業と認定されると、未払い残業代に加えて、遅延損害金や付加金が追加されることもあります。

サービス残業防止のポイント

サービス残業を防止するためには、労使ともに適切な労働時間に関する意識を高めることがポイントでしょう。まず事業主は法的な知識を身につけるため、厚生労働省の「労働時間適性把握ガイドライン」を確認して遵守する必要があります。

従業員側は安易にサービス残業を認めず、個人での対応が難しい場合は、労働組合などを通して事業主側と交渉するべきです。また労使で協力して、積極的に職場風土や環境を改革することも重要なポイントです。

こうした取り組みに加えて、従業員の勤務状況と労働時間管理をシステムが行う、業務可視化ツールを導入することも一つの解決策かもしれません。

まとめ

サービス残業を従業員に求めるような企業や個人事業主は、十分な経営能力と労働環境を備えていないと判断されることになります。現在は世界的な潮流の中で、従業員を大切にしない企業は、そのブランド力を疑問視される傾向です。しかもサービス残業は、明らかな違法行為なのです。

サービス残業を防止するためには、労使が協力して労働環境を改善する必要があります。それができない企業や個人事業主のもとで働くことは、従業員自身も違法行為に協力することになってしまいます。そうならないために、就職・転職の際には事前に労働環境をしっかりと確認しておくことが重要のようです。

人事労務担当者必見!チェックしておきたい法令・業務のヒントをわかりやすく解説。