グループウェアの「Google Workspace(旧 G Suite)」やCRM の「Salesforce」とシームレスに連携するクラウド拡張ツールの提供を行うrakumo株式会社。
同社は2004年12月設立後、2020年9月に東証マザーズに上場を果たしました(市場区分見直しにより、現在はグロース市場に上場)。

同社が提供する「rakumoシリーズ」は、Google WorkspaceやSalesforce だけではカバーできない領域まで機能を拡張し、業務効率化を容易に実現できることに加えて、直感的に使える操作感やシンプルで使いやすい管理画面が特徴で、多くの企業に導入されています。

今回のCFOインタビューでは、同社のIPO達成をけん引し、M&A や子会社役員としても活躍する取締役CFOの西村 雄也氏にMS-Japan執行役員の清水悠太がお話しを伺いました。

銀行・証券会社の経験を経て、ベンチャーCFOになるまでの経緯やその中で培った仕事観、これからの管理部門人材のキャリアに必要なこと・重要なことについて詳しくお話しいただけました。

「経営層に関わる」「グローバルに活躍する」を重視した就職活動。三井住友銀行、野村證券と渡り現職へ

――(清水)まずは、西村様のご経歴をお伺いします。学生時代に打ち込んだことや、新卒で三井住友銀行に入社した背景から教えてください。

大学時代は工学部電子情報工学科に所属していて、研究に力を注いでいました。常に「どうすれば効率的に研究を進められるか?」といった視点で研究に没頭していましたが、今にして思うとその頃の視点が現在の仕事にも役立っているのかなと思います。
また、関東大学同好会サッカー連盟新関東リーグに所属しており、そこでは2年間ほど組織の代表をやっていたのですが、「組織を作る」ということの原点を知り、同時に難しさも感じました。最初は何でも一人でやろうとしていたのですが、限界を感じて他のメンバーに頼りながら組織運営をする経験が積めました。

それ以外では国際交流にも積極的に取り組み、日本語教師ボランティアという形でオーストラリアのマラワにホームステイも経験しました。

――(清水)ホームステイ先のマラワは、都市部からはだいぶ離れた村ですが、何か所縁があるんですか?

いや、特にそういったものはなく、ホームステイ先の選定の際に、異文化に触れるのであれば日本人がいっぱいいるシドニーのような大都市ではない場所が良いと希望したところ、アボリジニが90%以上の本当に日本人が1人もいない村にホームステイすることになりました。
そこでは日本ではちょっと考えられないくらいさまざまな整備が行き届いておらず、驚かされたことも一度や二度ではなかったですが、今となっては良い経験ですし、基本的に困難な道を選択する性分なので大変でしたが後悔はありませんでしたね。

――(清水)目的達成のためには、困難なことでも合理的な選択をする西村さんらしさが培われた学生時代が伺えるエピソードですね。就職は、理系大学出身ですが金融機関を選択されていますね。どのような軸で就職活動しましたか?

理系推薦で、大手メーカーなどに就職する手もあったのですが、自分としては将来的に「経営に関わってみたい」「グローバルに活躍したい」の2点を考えていました。
結果的に三井住友銀行を選んだのはM&Aコンサルや外国為替など、融資以外のさまざまなソリューションを提供していたところです。コンサルティングファームも検討していましたが、自分があらかじめ設定していた目標に当てはまっているのは三井住友銀行だと思い、入社を決めました。

――(清水)三井住友銀行に入社してから、どのような経験を歩みましたか?

三井住友銀行に入社したのは2005年4月のことです。この頃は銀行が大きな転換点を迎えていて、従来であれば最初は支店に入り、支店の窓口業務などを行うことが主でしたが、私が入社する頃には最初から法人営業に配属されるようになりました。お蔭さまで、非常に良い経験を積むことができました。
具体的には、融資を中心にそれ以外の業務として、不動産のリース化や売上債権流動化、外国為替、国内為替業務、ビジネスマッチング等にも関与できました。
とはいえ新人だったので、顧客開拓は基本的に自分で新規開拓をする必要がありました。この時もいかに効率よく新規開拓ができるかを考えて、顧客のセグメンテーションをしたうえで、新規開拓をしておりました。

――(清水)新規開拓など営業も得意そうですね?

いやどちらかというと苦手でした (笑)。
ただ、仕事となるとどうしたら成功できるかという視点になるので、まずは書籍から基本を学び、先輩に質問をしてケーススタディをする。そこから自分なりの方程式を作り上げて実践していました。
顧客属性を分析し、パターン化して、それぞれに適したセールストークを作り込んだり、今でいうところの顧客リードを作るために支店から情報が最初に得られるルートを作ったり計画的に営業をしていました。

――(清水)昨今、注目されているセールスハックや営業科学を当時から独自にやっていたのですね。その後、野村證券に転職された経緯を伺えますか?

三井住友銀行の寮が一緒で親しくなった先輩が、野村證券の企業情報部に転職されてM&Aの業務に従事されていました。銀行で幅広い経験を積めていましたが、より専門的なスキルを身に着けたいと考えていたところに、M&Aアドバイザリーの仕事について先輩から話を伺う機会を得て魅力的に感じ、転職を決意しました。
結果的に2007年8月に野村証券の企業情報部に入社して、9年間M&A部門に、その後2年間IPO部門に在籍しました。

M&Aについては書籍での知識しかなかったので、プロジェクトチームの末端メンバーのアナリストからスタートして、複数年経過したのちにプロジェクトマネージャーになりました。自社の国内メンバー及び海外メンバーの他、弁護士、会計士、相手方といった、時には100名程度に及ぶ複数の関係者を巻き込みながら計画通りに案件を進行するという経験を積みました。

――(清水)銀行時代の経験で、何か活かせるものはありましたか?

2つありますね。

1つ目は、短時間で財務諸表を正確に読み解けたので、BS、PLがどのように動くのかが正確に把握でき、買収対象の企業の成長性、及び倒産リスクが予め想定できることです。
2つ目は、銀行時代に融資をする格付け基準を自分なりに6段階で判定していたことが役立ちました。本来はM&A案件を取りまとめたら仕事は終わりなのですが、私としては、その後の企業成長に繋げたいと考えていたので、独自視点で良いアドバイスができたと考えています。

――(清水)学んだことを体系化するのは、西村さんの強みですね。その後、公開引受部に異動したのはどのような経緯ですか?

新卒の当時から「経営」に興味があり、そこから「組織設計」と「組織運営」が重要と考えるようになっていました。そんな中で、IPOはまさにその2つを整備していく仕事だったので、経験したいと思い異動させてもらいました。

証券会社の公開引受部だったので、IPOのど真ん中に集中的に携わることができて、非常に良い経験になりました。具体的には、組織設計、予算統制、労務、人事、法務、上場審査、ファイナンス、エクイティストーリーなど多面的に体系的にスキルを整理して身に着けることができました。
ここでの経験から、私の中でIPO業務は、大項目24個とそれに付随する小項目500個に整理できていて、それらを着実にクリアしていけば達成できると考えています。

他の仕事でもそうですが、付加価値のある良い提案を出すためにも、まずは業務を徹底的にシステマティックにしていくことが重要だなと感じています。私の中では、70%はシステマティックに効率的に行って、30%は良いアドバイスを出すということを心がけています。

――(清水)期待していたとおりIPOを通じて「組織設計」と「組織運営」のスキルを身に付けるという点では最高の環境ですね。不満があったわけではなさそうですが、そこからrakumoに転職したのは何故ですか?

IPO支援の経験を積むほどに、実際に当事者として企業経営に携わりたいと考えるようになり、転職を考えるようになっていました。ただ、不満があったわけではないので、いろいろな企業の話しを聞いてじっくり探していたなかで、現職と巡り合いました。
実は、現職はMS-Japanさんからのご紹介だったんですよ(笑)。その際には大変お世話になりました。ありがとうございました。

「M&A」「IPO」などの責任者、そして経営管理部の組織設計へ

――(清水)弊社の紹介もいただきありがとうございます(笑) 仕事上でも、転職活動でもいろいろな企業を見てきた中でrakumoに参画した決め手は何ですか?

大きく分けて3つあります。

1つ目は「そこに勤めている人たちの人柄が良かったこと」です。社長を含めてさまざまな方と面談したのですが、人柄にとても良い印象を抱きました。

2つ目が、「事業が伸びると自分なりに確信が持てたこと」です。これまで培った分析手法を用いて客観的に事業の成長性を予測していったのですが、はっきりと成長性が感じられました。

そして3つ目が、「海外子会社があったこと」です。「経営」と共にある「グローバル」という軸でスキルアップが図れると考えました。海外子会社があると、会計処理やコミュニケーションが難しくなる一方で、新しいスキルは確実に身に付くと考えていました。

もちろん、IPO準備段階だったので即戦力として経験を活かし、貢献できるという点もありrakumoに参画しました。

――(清水)ご経験から客観的かつ合理的に企業を見ていらっしゃいますが、1つ目が「人」というのが興味深かったです。

結局、一人で事業を成長させるわけではないので、どんなチームで仕事をするのかは重要だなと、外部から企業を見てきたからこそ思っています。特に私の場合は、CFOなので経営層の一角として、社長との人となりと相性は重視していました。

私は自分の考え方に固執するというわけではないですが、安易に流されたりするタイプではないですし、言いたいことは言葉を選びはしますがしっかりと言うタイプです。その点、当社の社長は、話をしっかりと聞いてくれるタイプなので、大変ありがたいと考えています。
ただ、単純に人柄が良くて、意見を聞いてくれるだけではなく、経営者としてビジネスパーソンとして的確な言動をされる方であり、その点で、弊社社長の御手洗は信頼できる人物でした。

――(清水)良いご縁を繋げたようで良かったです。改めてrakumoでの西村さんの入社時からこれまでのミッションを教えてください。

大きくは2つの軸があります。
1つは「経営戦略」、もう1つは「経営管理」です。

1つ目の「経営戦略」は、IPO、M&A、資金調達等がミッションです。
2つ目の「経営管理」では、多岐にわたる経営管理業務のプレイングマネージャー業務がミッションです。

現在は、経営管理部長が活躍してくれているので、プレイング領域というよりは、組織設計及び目標設定などが主軸にはなっています。
私は、良い目標設定がメンバーを最も成長させる要素と考えているので、かなりの時間を使ってこの点を取り組んでおります。

――(清水)目標設定は重要ですよね。しかし、経営管理部門の目標設定って難しい印象がありますが、どのようにされていますか?

目標設定で重要なのは、役員や管理者側とメンバーの目線が一致していることです。
弊社の場合、OKRとコンピテンシーを基本として目標設定を行っており、具体的に気を付けていることは「期限を定めること」、出来る限り「定量的な目標を設定すること」です。

そこが経営管理部門だと難しくなるのですが、例えば、「M&A先企業の経理処理をいつまでにできるようにする」とか、「監査法人からの指摘を何件以下にする」といった具体的で定量的な目標設定をしていきます。
また、この目標も一方的に決めるのではなく、基本的には1on1でコーチングを中心にしながら、目標を設定します。
かなり時間がかかりますが、結果的にはメンバーが成長することが事業の成長の近道になりますし、それが役員及び管理職の重要な役割だと考えております。

M&Aの継続的な取り組みのためには、相手のカルチャーを尊重する

――(清水)rakumoでの上場準備を経て、次のステップに入っていく段階だと思うのですが、会社としてはどのような方向性を目指していますか?

まず会社としては、上場企業になったところで終わらず、さらに成長させていかなければならないと考えています。これは上場企業なので当然のことではあるのですが、私自身がIPO準備を通じてrakumoのサービスが便利で、仕事を進める上で助けられたからです。rakumoを世の中に広げることで、サービス導入企業様には煩わしい業務を削減して、その分クリエイティブな仕事に従事してもらいたいと考えています。

これはオーガニックな成長ですが、ノンオーガニックな成長としてはM&Aの継続的な取り組みも大切だと考えています。現在は子会社2社を買収していますが、引き続き企業価値の向上を目指してM&Aは検討しています。

また、これらの事業成長を促進させるためには、組織全体が強くなる必要があると思っています。
そのために、業務の可視化、重複化をして強固な組織を作りたいと考えています。また、ノンオーガニックな成長に耐えうる組織を作っていきたいです。

――(清水)西村様は現在、株式会社gambaの取締役も兼務しているかと思いますが、グループに取り込んでいくうえでの課題や、業務上の苦労があれば教えてください。実際にノンオーガニックな成長の1つとして、gambaの役員として取り組んでいる課題を伺いたいです。

やはり上場企業にもなると経理周りが大変ですね。上場企業の基準に則ったものを作り上げていかなければならないので、労務関係や経営管理の統合など、経理関係を同じレベルまで持っていくのが難しいと感じています。
そして、グループにジョインしていただくにあたって重要なことは、「相手のカルチャーを尊重する」というところにあると思っています。もちろん合併をするのであれば別ですが、お互いの良いところを共有しあいながらお互いに成長していくということだと思っております。

具体的にやっている取り組みとしては、例えば、カスタマーサクセス部門、プロダクト部門、事業部門、経営管理部門、それぞれでお互いの施策を共有し、お互いのやり方を学び、自社に還元するというようなことを実施しております。
また、当社が相手側の経営にコミットをしつつも、現場責任者の意見も尊重しながら、経営会議等の場を設けて進めていき、現場が納得感ある形にしていくことを大切にしています。


変化を恐れず、なおかつ長期の目線で考える

――(清水)西村様が経営管理やCFOとして大事にしていること・仕事観を教えてください。

まずは「会社のビジョン、行動指針の尊重」です。私自身もそうですし、入社時点で考えなければならないことだと思います。特に小さな組織で重要視される部分です。

次に「経営陣の1人として、経営戦略などを通じた企業価値の向上への貢献」です。これはM&AやIPOなど、これまでに経験したことを活かしつつ、貢献していければ良いと考えています。
さらに「経営陣の1人として、会社全体の最適化からの経営判断の実施」です。経営管理部門を見ている立場ではありますが、経営陣の1人でもあるので、企業全体の目線で最適化を考えています。

そして「強固な経営管理部の組織構築と成長の機会の提供」です。また「自身のマネジメント論の軸をぶらさないこと」も重視しています。

――(清水)最後にマネジーの読者に対して、管理部門人材のキャリアに必要なことや、重要なことについてメッセージをいただけますか?

現在は、管理部門も含めて変化の激しい環境下に置かれていると思っています。その中で、変化を恐れず、なおかつ長期の目線で考えたほうが良いと私は考えております。具体的には、足りないスキルを取得しつつ、現在のスキルに磨きをかけていくのが大切だと思っています。

――(清水)以上になります。本日はありがとうございました。


まとめ

今回のインタビューでは、rakumo株式会社 取締役CFOの西村様にお話を伺いました。大学時代から新卒の就職活動・転職、現職でのご活動まで、幅広いトピックをお話しいただいています。西村様のキャリアを拝見すると、最後の言葉に集約されるように、「これまでの自分の経験を還元しつつ、さらに新しいスキルを手に入れよう」というスタンスがわかります。

今回は、変化をネガティブに捉えるのではなく、あくまでも自分の成長の機会と考えるマインドセットを学びました。M&Aや IPOについて極めて高い専門性をもちながら、さらに新たな課題に突き進んでいく姿勢に、刺激をもらった方も多いのではないでしょうか。

<プロフィール>

西村 雄也(にしむら ゆうや)/rakumo株式会社 取締役 CFO

工学部電子情報工学科卒業後、新卒で三井住友銀行に入行して法人営業を経験。
2007年に野村證券に転職してM&Aアドバイザリー、IPO支援(公開引受業務)を経験。その後、2018年よりrakumoに参画し、取締役CFOとして同社のIPO達成をけん引。



インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 事業企画Division/執行役員

2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在は事業企画Division/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。

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