内閣府は11月8日に、「令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究*」を公開しました。「アンコンシャス・バイアス」とは、まだ耳になじまない言葉ですが、簡単に言うと誰にでもある無意識の思い込みのことです。
*調査方法:インターネットモニターに対するインターネット調査
調査対象:全国男⼥20代〜60代の10,906⼈
調査期間:令和4年8⽉17⽇(⽔) 〜 8⽉24⽇(⽔)
この調査結果では、主に男女間での意識の違いについて、さまざまな項目を設けて分析しています。現代人の意識を知るための貴重な情報として、この調査で特に注目すべきポイントを紹介します。
アンコンシャス・バイアスとは?
バイアスとは偏見や思い込みを表す言葉であり、それを無意識下で行っているのがアンコンシャス・バイアスです。これは誰にでもあてはまることで、例えば以下に挙げるような考え方もアンコンシャス・バイアスの一つです。
・相手の性格を血液型で判断する
・単身赴任という言葉から男性を連想する
・飲食店で周りの人に合わせて同じメニューを頼む
・男らしさ、女らしさを意識する
・相手の年齢、職業、学歴などにこだわる
これらはほんの一例ですが、何気なく物ごとを決めつけてしまう判断や言動が、周囲の人々に迷惑をかけたり、自分自身の可能性を狭めたりすることにつながることも考えられます。
ここからは、調査によってどのようなアンコンシャス・バイアスが明らかになったのか、具体的な調査項目を検証してみましょう。
アンコンシャス・バイアスに関する調査の概要
今回の調査は内閣府男女共同参画局により、全国の男女20〜60代10,906人を対象にインターネットを通じて行われました。
さまざまなシーンごとに、性別役割意識を複数の項目で調査しており、質問に対して「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」という回答の合計を割合(%)で表示しています。
ここから、すべてこの二つの回答を合計した数値をもとに、特に興味深い調査結果を解説します。
社会における性別役割意識
まずは社会全体における、男女の役割意識についての結果です。
●男性で目立った回答
・男性は仕事をして家計を支えるべきだ(48.7%)
・女性は感情的になりやすい(35.3%)
・デートや食事のお金は男性が負担すべきだ(34.0%)
・育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきでない(33.8%)
・共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先すべきだ(28.4%)
●女性で目立った回答
・男性は仕事をして家計を支えるべきだ(44.9%)
・女性には女性らしい感性があるものだ(43.1%)
・女性は感情的になりやすい(37.0%)
・女性は結婚によって経済的に安定を得る方が良い(27.2%)
・デートや食事のお金は男性が負担すべきだ(21.5%)
予想外の結果に思えるかもしれませんが、男女ともに男性が仕事をして家計を支えるべきだという意見が目立ちます。幅広い年齢層が対象ということが関係しているかもしれませんが、意外と昔と変わらないという印象です。
年齢別に比較してみると、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」という回答は、60代男性が60.7%で最も高く、反対に20代女性が36.0%と最も低い結果になっています。
職場における性別役割意識
ここからは、ビジネスシーンでのアンコンシャス・バイアスについて、男女ともに20代と50代に注目し、意識の違いを分析してみましょう。
●男性なら残業や休日出勤をするのは当たり前だ
・20代男性:18.2% 50代男性:19.5%
・20代女性: 9.8% 50代女性: 7.9%
●同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ
・20代男性:20.4% 50代男性:15.7%
・20代女性:11.0% 50代女性: 8.4%
●職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ
・20代男性:20.5% 50代男性:14.7%
・20代女性:13.4% 50代女性: 8.6%
●男性は出産休暇/育児休業を取るべきでない
・20代男性:18.2% 50代男性:15.6%
・20代女性: 9.7% 50代女性: 9.1%
●仕事より育児を優先する男性は仕事へのやる気が低い
・20代男性:18.9% 50代男性:16.7%
・20代女性: 9.4% 50代女性: 9.7%
これらの項目では、男女間で大きな意識の違いが表れています。またここでも意外なことに、20代男性が最も男性の役割について意識しているという結果が出ました。
結婚に関する価値観の相違
最後に、結婚に関する男女の意識についても見てみましょう。
●女性は結婚によって、経済的に安定を得る方が良い
・20代男性:28.6% 50代男性:29.0%
・20代女性:26.3% 50代女性:27.4%
●仕事で成功していても、結婚していない女性は何かが足りないと感じる
・20代男性:22.0% 50代男性:19.9%
・20代女性:13.7% 50代女性:14.7%
●仕事で成功していても、結婚していない男性は何かが足りないと感じる
・20代男性:21.7% 50代男性:23.7%
・20代女性:15.7% 50代女性:15.6%
女性の生活が結婚によって安定得るのがよい、という意見は男女ともによく似た結果になっています。ほかの二つの項目を見ると、結婚を重視する意識は男性の方がやや高いのかもしれません。
まとめ
アンコンシャス・バイアスは誰にでもあるものですが、それをそのまま気づかずにいることは、個人の生き方に大きな影響を与える可能性もあります。無意識に偏った判断をすることが、ビジネスのキャリア形成にもかかわってくる問題かもしれません。
この調査結果から見えるように、今でも日本の社会とビジネス環境においては、年齢にかかわらず昔ながらの意識が継承されているようです。それが日本の伝統なのかもしれませんが、こうした無意識の思い込みは今後変わってゆくのでしょうか?
