女性活躍推進法に関する制度改正により、「男女の賃金の差異」の公表が義務付けられます。対象となる企業は、公表への対応が求められることになります。対象になる基準と注意すべきポイントを整理しておきましょう。
常時雇用する労働者数 301 人以上の事業主に公表義務化
“女性活躍”が声高に叫ばれていながらも、依然として日本では、女性の賃金は男性に比べて、低く抑えられているのが実情です。それが女性の活躍を妨げている要因の一つと指摘されています。
こうした指摘を受け、是正する動きがあるものの、先進諸国に比べるとまだまだ男女の賃金格差は、大きいといわざるを得ない状況です。
そこで、女性活躍推進法にもとづく情報公表項目に「男女の賃金の差異」を加え、常時雇用する労働者数 301 人以上の事業主に対しては、男女の賃金の差異の公表が義務付けられることになりました。
公表は、その次の事業年度の開始後3ヶ月以内とされています。事業年度が4月から3月の場合、令和4年4月から令和5年3月の実績を、令和5年6月末までに公表しなければなりません。
公表した内容は、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」や、自社ホームページなどで、求職者が閲覧できるようにする必要もあります。
担当者を悩ませる賃金の差異を算出する手順
これまでの情報公表は、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の二つの区分から、それぞれ1項目以上を選択して公表するというものでした。
「男女の賃金の差異」は含まれていませんでしたが、今回の改正で、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に「男女の賃金の差異」の項目が、新たに加えられることになったわけです。
多くの情報公表担当者を悩ませるのが、賃金の差異を算出する手順でしょう。詳しい算出手順などは以下を参照してください。
厚生労働省|男女の賃金の差異の情報公表について
厚生労働省のサイトで算出手順を確認
賃金の差異を算出するうえで、担当者が直面するのは、パートなどの非正規雇用労働者や、正規雇用労働者でも短時間勤務や育児短時間勤務者など、短時間勤務の社員数や労働時間をどのように換算すべきか、などです。
短時間勤務者については、フルタイム労働者の所定労働時間を基準に換算してもよいことになっています。注意すべきは、短時間勤務者の基本給がフルタイム労働者の基本給を減額したものとなっているかどうかです。
算出するためには、公表内容をしっかりと把握するとともに、ルールに則って算出しなければなりません。
情報公表、女性活躍推進法の詳細については、厚生労働省が運営する以下サイトを参照してください。
女性の活躍推進企業データベース
女性活躍推進法特集ページ
まとめ
求職者に対して男女の賃金の差異を公表することで、男女の賃金格差の是正につながるかどうかは未知数ですが、いくばくかは解消されることに期待したいところです。
先進諸国並みの水準に近づくためには、まだまだ先のことでしょう。深刻な人手不足に対応していくためにも、女性の活躍が欠かせないことは明白です。女性から選ばれる企業になるためにも、正確な「男女の賃金の差異」を公表するようにしましょう。
■参考サイト
記事執筆に際し、参考資料として閲覧したサイトです。リンク先としてご使用される場合は、許可取りの要否などご確認いただけますと幸いに存じます。
労務ドットコム|男女の賃金の差異の情報公表、昨年末にFAQが改訂されました
労務ドットコム|男女の賃金格差の開示を求める女性活躍推進法制度改正 2022年7月8日に施行されました
厚生労働省|女性活躍推進法に関する制度改正のお知らせ
厚生労働省|女性活躍推進法に基づく「男女の賃金の差異」の公表等における解釈事項について
厚生労働省|女性活躍推進法の省令・告示を改正しました
厚生労働省|男女の賃金の差異の情報公表について
労働政策研究・研修機構|301人以上の事業主に「男女の賃金の差異」の開示を義務付け